院長の木村です。
さて4月も中盤に差し掛かってきました。
皆さんのわんちゃんはもう健康診断を済ませていますか?
当院でも3月から犬用春のフィラリア健診キャンペーンを開始して以来、すでに40頭以上の健診を実施しています。
3月から犬のフィラリア予防と春の健康診断キャンペーンが始まります!
さて本記事ではこの時期だからこそ、改めて健康診断の必要性についてまとめてみようと思います。
健診を受けさせるかどうかお悩みの方がいれば、どうぞ最後までご覧ください。
健康診断とは
健康診断とは、人でする健康診断と同じイメージで考えていただければ大丈夫です。
スクリーニングの血液検査を始め、特殊なホルモン検査、尿検査、レントゲンやエコー検査などを実施します。
ただし人の企業健診のように法律で決められた項目はありませんので、どの検査をするのかは病院ごとあるいは動物ごとで異なります。
ちなみに当院では、血液検査のコースと血液検査+胸部レントゲン+腹部エコーのコースの2種類があります。
更に年齢を基準にして若い子用、シニア用、ハイシニア用の3種、つまり合計で2×3=6種類のコースを準備しています。
健康診断をするメリット
健康診断をお勧めするのには当然理由があります。
それを1つずつ紹介しますね。
健康診断のメリット①:隠れている病気を見つける
元気な動物であっても、病気が無いとは限りません。
人でも肝臓は沈黙の臓器と言われているように、動物でも重症化しないと分からない病気は数多くあります。
そして早期に病気を発見できれば早期に治療が可能であり、そして治療成績が良くなります。
例えば膀胱炎では慢性化すると本当に治療に苦労しますし再発もしやすいのですが、初期症状であれば速やかに抑え込むことができます。
ちなみにこのメリットは何もシニアに入ってからの話とは限りません。
若くても先天性疾患があったり、病気が始まっていることは十分に有り得るからです。
健康診断のメリット②:基礎データを作る
「健康診断をして全てが良好だからする意味が無かった」というのは有り得ません。
なぜなら健康体の基礎データを作れたからです。
もし今後何かの病気にかかって検査をした時に、基礎データがあれば比較して原因を絞り込めやすくなります。
例えば元気な時に肝嚢胞を発見したわんちゃんがいたとしましょう。
ある日食欲不振が起きて調べたら肝数値が上昇していた場合でも、画像上変化が無ければ「その肝嚢胞は関係なさそうだ」と判断できます。
そう判断できれば、「他の原因での肝炎か胆管炎?」などと考察できる訳です。
このように基礎データの有り無しというのは、何か病気が起きた時の治療難易度に差がついてきます。
健康診断のメリット③:投薬や持病の影響を調べる
持病があって長期間の投薬をしていたり、持病そのもので他の臓器に影響が無いかを定期的に調べる必要があります。
もちろんその場合は健康診断以外のモニターも実施しますが、時々はトータル検査をするべきでしょう。
心臓病があるからと心臓検査だけしていたとしたら、循環不全から来る腎臓病に気付けない可能性もあります。
またどれだけ安全な薬であろうと、薬である以上肝臓で代謝され腎臓から排泄されます。
その影響をモニターするのも、今後の治療方針に大きく関係してくるのはイメージしやすいのではないでしょうか。
ですので臓器を絞らずに一通り調べる健康診断はとても重要であると言えます。
健康診断のメリット④:安心感が得られる
健康診断で体が良好であることを確認できれば人側が安心感を得られます。
人は「分からないこと」に不安を覚える生き物です。
同じ嘔吐症状であっても、健康診断で良好なことが証明されていればさほど不安にはなりません。
しかし長い間健康診断をしていなければどうでしょうか?
「もしかして病気が隠れていて、それの初期症状なんじゃ?」
こんな不安に駆られることは無理もないことです。
意外かも知れませんが、今の動物の体の状態を知っておくというのは人側のメンタルコントロールにもなります。
健康診断をするデメリット
メリットだけで話が終わるといかにも怪しいので、今度はデメリットも考えておきましょう。
健康診断のデメリット①:お金がかかる
当たり前ですが健康診断をするにはお金がかかります。
検査内容にもよりますが、一般的には1〜2万円程度は必要なことが多いのではないでしょうか。
※当院の費用は広告規制ガイドラインにより記載できません
また、基本的に健康診断は保険適応となりません。
せっかく月々支払って加入している保険が使えないのは大変残念ですが、これはどうしようもありません。
病院としても適当な病名を付けて保険適応させると詐欺罪に問われますので、頼み込まれてもどうにもなりません。
健康診断のデメリット②:検査ストレスがかかる
人でも健康診断のことを考えたら、正直いってテンションは上がりませんよね。
動物はそれ以上で、特に怖がりの子ではそれなりの検査ストレスがかかります。
もし同時にワクチン接種をした場合は体にダブルのストレスがかかりますのでとても疲れてしまいます。
場合によってはその後に一時的な体調不良を起こす可能性もゼロではありません。
もしそういった検査ストレスがご心配な場合は、まずかかりつけ医に相談すべきでしょう。
例えば血液検査だけなら採血だけなので、最低限のストレスで済んだりします。
もちろん検査を減らすと得られる情報も減りますので、簡単に済ませばいいというものではありませんけどね…。
健康診断のデメリット③:見つけたところでどうしようもないパターン
これはやや例外的な話ですが、健康診断で病気を見つけたとしても治療できなかったらさほど意義はありません。
治療できないとは①治療法が無いもしくは耐えられない、②金銭面で不可能の2パターンです。
ただし①のように判断するにはまず病気を診断する必要がありますので、検査する前から考えることではありません。
健康診断の頻度
さて、メリットデメリットを把握できたと思いますので健康診断の頻度について説明します。
人では1年に1回の健診が推奨されていますが、わんちゃんではどうでしょうか?
答えは「病院や獣医師の判断や動物の体調による」です。
多くの病院では春にわんちゃんの健康診断キャンペーンを推奨していると思います。
場合により秋にも同様のキャンペーンがあるかもしれません。
※当院では犬用で秋にも、猫用で冬に健診キャンペーンを実施しております
基本はそれらを利用し、「最低年1回の健康診断を受けさせる」ということで良いと思います。
しかしある高名な先生(獣医ならほぼ100%知ってる)は年4回を推奨しています。
なぜなら、動物は人の3〜4倍のスピードで老いていくと言われているからです。
つまり「人の1年は動物で言えば3ヶ月だよね」という理屈ですね。
当院でも、心臓や腎臓などで持病がある動物では年2回以上の健診を推奨しています。
推奨される健診頻度はケースバイケースということがお分かりいただけたでしょうか。
当院でのケース
最後に当院で健康診断をして治療方針が変わった例を一部紹介します。
①病気が見つかった
元気な健診時に脾臓に影が見つかり、摘出し病理検査をしたところ悪性の腫瘍だった。
現在は早めの摘出が奏功し、転移兆候も無く元気に経過観察中。
②長期投薬中での方針変更
皮膚の痒みで長期に投薬しているわんちゃんが、肝数値が上昇していることが見つかった。
なるべく内服を減らし、ギリギリできる範囲で外用薬(シャンプーや塗り薬)に切り替え管理中。
③基礎データが役に立った
健診による基礎データがあったため、本来なら正常の白血球数を異常と判断。
速やかな精査からの緊急手術で一命を取り留めた。
最後に
いかがだったでしょうか。
なるべく専門用語を使わずに健康診断を毎年必要な理由をデメリット込みで解説しました。
当院では一貫して最低年1回の健康診断を推奨しています。
もし推奨しないとしたら、健康診断をすることで持病の治療やその他の予防資金がショートする時だけです。
もし健康診断を受けさせるか悩んでいる、あるいは必要性に疑問を感じている方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。
当院の健康診断に関して疑問点、質問などがありましたらどうぞ下記までお問い合わせください。
たかつきユア動物病院(木曜・日曜・祝日休診 9:30-12:30、16:00-19:00)