院長の木村です。
本記事は「耳ダニの症状とその見分け方」について解説します。
もしかしたらウチの子耳ダニかも?と思った方は、ぜひ最後までお読みくださいね。
耳ダニとは?
耳ダニ(俗称)とは耳ヒゼンダニ(otodectes cynotis)による外耳や皮膚の感染症です。
耳ダニは犬猫共通の感染症で、人にも皮膚炎を起こすため注意しなければいけない皮膚病の一つです。
主に子犬や子猫で感染が見つかります。
症状
以下のような耳を痒がる動作が主な症状です。
- 耳や耳の後ろを頻繁に後肢で掻く
- テーブルや絨毯に耳を擦り付ける
- 頭(耳)を何度も振る
外耳道以外の皮膚にも寄生できますので、耳の症状と同時に他の部位の皮膚にも炎症を起こすことがあります。
ほっておくとどうなるか
耳ダニを治療せずに放置しておくと、外耳炎が重症化したり別の病気を起こす可能性があります。
外耳炎が重症化
- 痒みや痛みでイライラしたり眠れないなど、動物のQOLが著しく低下する
- 頻繁な掻き行動により皮膚の外傷や別の細菌感染症を起こす
- 耳道が硬化し、最悪のケースでは生涯に亘る外耳炎管理が必要となる
耳血腫
耳を振ったり度重なる掻き刺激により耳介(耳たぶ)から内出血を起こしパンパンに腫れることがあります。
これを耳血腫と言います。
耳血腫を起こした子のほとんどは、程度の差こそあれど治癒後に耳介の瘢痕収縮を起こし耳がシワシワになります。
こうなったら生涯治ることはなく、また異常な形の耳となることで耳トラブルが頻発するようになります。
耳ダニを疑うケース
耳ダニは割と特徴的な皮膚病の一つであるので、知識があれば一般家庭でも疑うことが可能です。
具体的には以下のような条件を満たせば満たすほど耳ダニを強く疑います。
◎ペットショップやブリーダーから自宅に来たばかり(同居動物も含む)
◎時に出血跡のカサブタを伴う黒褐色のややゴツゴツした耳汚れ
○左右の耳ともに症状あり
○強い痒み行動
△同居動物も耳を痒がっている
特に◎の項目は、経験上ほぼ100%当てはまります。
なぜなら耳ダニはブリーダーまたはショップ内で他の犬猫から感染するものであり、また出血を伴いやすいのでカサブタに近い耳汚れが出るからです。
※写真が撮れたら掲載しておきます
それ以外の症状も当てはまる場合は、ますます耳ダニが疑わしくなるため早急に動物病院を受診する必要があります。
治療方法
耳ダニの治療難易度は決して高くありません。
耳ダニを駆虫できる薬を使いながら、荒れてしまった外耳炎を落ち着かせるという治療内容になります。
どちらかと言えば、耳ダニを疑ってしっかりと検査する方が大切です。
なぜなら耳ダニと気づかずに普通の外耳炎治療をしていては一向に治らないからです。
さて耳ダニ治療ですが、早ければ2回程度の通院処置で終了します。
耳ダニに感染していた期間が長く、外耳道がかなり炎症している犬猫ではもう少し治療期間が必要なこともあります。
ただし注意することは、耳ダニ治療で一般によく使われている薬剤が2022年8月現在で長期欠品を起こしている点です。
耳ダニに効果がある薬剤は欠品していないものを含めて複数種ありますが、かかりつけの動物病院で取り扱われていない場合は治療方針の立て方が少し難しくなります。
最後に
本記事では耳ダニの症状とその見分け方について解説しました。
耳ダニは診断や治療がさほど難しくない一方、放置していると自然に治らないどころか耳に治らないダメージを与える可能性もある病気です。
耳ダニを疑ったら速やかに動物病院を受診し、しっかり検査や治療を受けましょうね。
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