院長の木村です。
ブリーダーやペットショップから子犬を迎えた時は、ワクワクするのとともに体調が大丈夫か心配したりもしますよね。
実際に自宅に来てから1〜2週間は、環境に慣れておらずストレスがかかる時期ですので子犬は体調を崩しやすくなります。
そして子犬は基礎体力が無く、元気そうに見えても急にグッタリし始めることがありますので注意しなければいけません。
そこで本記事では、「子犬を迎えた時に注意したいこと」をテーマに解説します。
下痢や咳などお迎え直後に起こしやすい症状も併せて紹介しますので、子犬のお迎え直後やこれからお迎えする予定の方はどうぞ最後までお読みください。
結論
- 子犬は生命に関わる脱水・低血糖・低体温に注意する
- 下痢があればまずは感染症とおもって対応する
- 咳はほぼ感染症なので隔離しつつ体調が悪化すればすぐ病院を受診する
子犬は基礎体力が低くすぐ体調が崩れる
子犬は成犬と比べて体力が無く、すぐに体調を崩します。
特に注意しなければいけないのは以下の3点です。
- 脱水
- 低血糖
- 低体温
これら3点を見過ごしてしまうと、生命に関わる事態にまで発展しかねませんので注意しましょう。
これらの体調悪化の特徴は共通して「体が冷たくなってグッタリすること」です。
特に体が冷たくなる=冷感は、体の末端である足先や耳などから最初に現れるのでこれらを観察しましょう。
子犬は自分の体の限界を理解していないので、ぐったりするギリギリまである程度動いたりハシャいだりします。
つまり「ちょっと元気ないけど、オモチャには反応するし様子見しよう」は子犬ではNGなのです。
人の赤ちゃんと同じように、子犬の時期はしっかりと様子の変化を観察し素早く行動する必要があります。
これら体調悪化の対策は以下の通りです。
①脱水
1〜2ヶ月程度のかなり早い段階でお迎えをした場合、まだしっかりと体が必要な分の水を飲まない子もいます。
「水を飲む量が少ないかな?足りないかな?」と心配な場面では、積極的に子犬用ミルクを補助水分として活用しましょう。
すでにある程度ドライフードを食べられている場合は、水やミルクでフードをふやかし強制的に水分補給するのも手です。
また離乳食をしばらくの間併用するのも水分補給としてはいいでしょう。
それ以外にも下痢によって脱水に陥る場合もありますので、その場合はなるべく早く動物病院を受診しましょう。
②低血糖
小さい子犬では丸1日何も食べないだけで体に黄色信号が点ります。
なぜならば、子犬は内臓が未成熟で予備の糖分を肝臓に十分蓄えられていないからです。
低血糖を防ぐには当然ながら食べるしかありません。
ドライだけではなく子犬用ミルクや離乳食など食べやすいものを与えてみてください。
それでも食べない場合は多少は強制給餌(スポイトでミルクを与えるなど)が必要になります。
もし嘔吐や下痢、発熱など体調不良があって食欲が無い場合は自宅で何とかしようとせず速やかに病院を受診してください。
どうしてもすぐ連れていけない場合は、子犬用ミルクのほか砂糖水(コーヒー用のガムシロップなど)も即効性がありますので投与してください。
③低体温
子犬は体温調節がうまくできませんので、外の気温や室温で簡単に低体温に陥ります。
低体温になると、ただでさえ未成熟な体の維持機能がますます働くなるので生命に関わります。
低体温にならないためには当然ながら暖かい環境を整えることです。
人が快適に感じる温度のプラス1〜2℃を目安にしましょう(暑がりの人は+3℃!)。
特に寒冷地では、朝晩の冷え込みが一気に体温を奪っていくことがありますので注意してください。
すでに脱水かつ低体温を起こしている状態で一気に温めると血圧低下によるショックを起こす可能性もあるので、気持ちゆっくり目に温めてください。
基本的に低体温となっている状態は危険で自宅では対応も難しいので、今すぐ動物病院を受診すべきです。
子犬の下痢と咳
お迎え直後に一番目にする症状は下痢(軟便)と咳です。
どちらも軽度〜重度まで症状の強さに幅がありますので、どこまで様子を見ていいか自宅で判断をしなくてはいけません。
下痢(軟便)
まず下痢(軟便)についてです。
子犬の下痢での原因は主に以下の2つです。
- 感染症
- 消化不良
1.感染症
細菌、ウイルス、寄生虫、原虫などの病原体感染による下痢です。
治療法は原因によって様々ですので本記事では割愛しますが、重要なのは人や同居犬に感染を起こすかどうかです。
特に迎えたての子犬では、どうしても寄生虫や原虫など感染力が強い病原体を持っている可能性が高いです。
下痢や軟便をしている場合は、同居犬(念の為、同居猫も)とはなるべく隔離し人も素手で便を触らないようにしましょう。
また原因が確定できない段階では、下痢をした後のトイレもアルコールや塩素系消毒薬で消毒しておくほうが無難です。
小さいお子さんでは素手で触ってそのまま手を口につけたりすることもありますので、どうぞご注意ください。
原因がどちらかを検査なしで判断するのは困難なため、初回の下痢は近日中に病院で糞便検査を受けることを推奨します。
子犬は下痢からの脱水や下痢→食欲不振→低血糖といった流れで体調を崩しやすいので、神経質に病院へ行ったほうがいいでしょう。
もう1点付け加えるならば、ワクチンを接種していない子犬が下痢を起こした場合は危険な「パルボウイルス感染症」の可能性もあるので速やかに受診すべきと覚えておいてください。
2.消化不良
子犬はどうしても消化管が未発達のために一度に吸収できる栄養に限界があります。
一方で体の成長のために、成犬よりも食欲が旺盛なのがこの時期の特徴です。
よって「体が栄養を欲しているからガツガツ食べる」→「消化不良で下痢」となることがよく起きます。
対策としては食事回数を1日4〜5回に増やして小分けにすることです。
1日トータル量が増えても1回あたりの腸への負担を減らすことができれば消化不良性の下痢を起こすリスクを下げられます。
咳
次に咳についてです。
子犬の咳は人のように「コホッコホッ」とした咳ではなく、「カッカッ」とノドに何かを詰まらせたかのような咳(乾性咳)が多く見られます。
原因としては基本的にケンネルコフ、つまり犬風邪の可能性が極めて高いので悪化傾向があったり元気がなくなってきた場合は速やかに病院を受診しましょう。
適切な治療を受ければ1週間程度で改善が見られますが、中には3〜4週間ほどしつこく咳が続く場合もあります。
咳を出している場合は、感染症と思って同居犬をなるべく隔離したほうがいいでしょう。
飛沫感染も考えられるため、症状が消えるまではできれば別部屋で隔離することが理想的です。
ちなみに猫への感染はほぼ考えられないため、同居猫の隔離は必要ありません。
最後に
本記事では「子犬を迎えた時に注意したいこと」をテーマに解説しました。
子犬は体力が低いからこそ、成犬ではなんてことのない軽症が命取りになることもあります。
成犬の病気に慣れている方であっても、子犬の体調悪化の場合は神経質なくらいに病院と連絡を取り合いましょう。