院長の木村です。
今回は皮膚炎や外耳炎を持っている犬猫を飼われているご家庭での、湿気が多い梅雨時期〜夏場にかけての注意点や対策法を説明をします。
アトピーやアレルギーなど、日々皮膚炎に悩まされている動物さんは多くいると思います。
なるべく症状を悪化させないよう、薬以外で出来ることも試してみましょうね。
湿度が高い時期に皮膚や耳が痒くなる病気とは?
ご存知の通り、日本では梅雨時期前後は非常に湿度が高くなります。
さて世の中には1年のうち5〜9月頃まで皮膚や耳の痒み・炎症が強く、涼しくなると調子が整ってくる動物さんが結構います。
これは「季節性の痒み症状」と言われ、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎を強く疑う症状の一つです。
用語解説:アトピー性皮膚炎/アレルギー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは「各種の環境アレルゲンに反応しやすい体質」、アレルギー性皮膚炎とは「特定のアレルゲンに反応して起こる皮膚炎」と理解してください。
※獣医学的な用語説明は却って混乱を招くので省きます。
食物アレルギー性皮膚炎以外では、基本的に季節によって痒みや炎症の程度に差が生まれます。
なぜなら季節によって飛散する環境アレルゲンの量が異なるからです。
一方で、食物アレルギー性皮膚炎は食事内容に変更が無い限りはアレルゲン摂取量が同じですので、季節によらず症状の程度は一定(あるいは悪化傾向)となります。
湿度が高い季節にはダニやカビに注意
さて本題に入りましょう。
湿度が高い梅雨〜夏場は、環境中にダニやカビが繁殖しやすいため皮膚炎が悪化することが多いです。
またアレルゲンとして問題となる各種花粉の飛散時期が集中するのも一因です。
その傾向はアトピー性皮膚炎と診断された犬猫で特に顕著です。
よって湿度が高い季節に皮膚炎や外耳炎が悪化しやすい動物を管理する上では、環境アレルゲンの排除に気をつける必要があります。
注意すべき環境アレルゲン①:ハウスダスト
ハウスダストとは室内塵のことですが、そのうちアレルゲンとして重要な「ヤケヒョウヒダニ」や「コナヒョウヒダニ」の説明をします。
これらのダニやその死骸はハウスダストに含まれるアレルゲンの代表格です。
ちなみにハウスダストからくる皮膚症状は、例えノミダニ予防をしていても回避できません。
そして想像すると気持ち悪いかもしれませんが、これらのダニは全ての家に存在し、どれだけ清掃しようが撲滅することは不可能です。
よってなるべく頻繁に清掃し、”ハウスダストを常に少ない状態を維持する”という意味での管理努力が必要となります。
ハウスダストのダニはマダニと違って人の目に見える大きさではなく、カーペットや布団などの繊維に入り込んで存在しています。
その点を踏まえての対策は、以下のような方法が挙げられます。
- カーペットや畳からなるべくフローリングに変更する
- 医療用防ダニ布団・シーツに変更する
- ハウスダストを巻き上げないようドライワイパー掃除→掃除機の順で清掃する
- 空気清浄機を設置する
※ただし動物の腰痛や関節痛対策で滑り止めマットを敷いているご家庭では、完全フローリング化は避けましょう
注意すべき環境アレルゲン②:カビ
湿度が高いと発生しやすいカビにも注意が必要です。
注意すべきは空気清浄機や除湿機、エアコンのフィルターや内部パーツでのカビ発生です。
これらは意識して交換・清掃する習慣がないとカビ発生にそもそも気づけないので、定期的にメンテナンスすることを心がけましょう。
いずれでもカビ発生に気づかずに使い続けるとカビの胞子を撒き散らす結果となり、結果的には皮膚炎を悪化させることすらあり得ます。
特にエアコンの内部パーツは一般家庭ではメンテナンスできないので、可能であれば1〜2年に1回はエアコン清掃業者に清掃を依頼した方がいいでしょう。
花粉は4〜10月が注意
人の花粉症の原因と言えば2〜4月頃がピークのスギ花粉が有名ですが、実は他にも色々な時期で様々な花粉が飛散しています。
例えばイネ科であれば5月〜夏場ですし、ブタクサなどは秋がピークです。
アレルギー(IgE)検査によって反応するアレルゲンの飛散時期が把握できていれば、その時期には積極的な対策を講じましょう。
場合によってはその時期だけ内服薬を始めたり、量を増やしたりすることが必要かもしれません。
注意すべき環境アレルゲン③:花粉など
多くのわんちゃんでは夏場も涼しい時間帯で散歩をすることが多いでしょう。
環境アレルゲン(花粉)は例え吸い込まなくても皮膚を介して炎症を起こします。
よってアレルゲンが付着したであろう散歩後の体(被毛)を固く絞ったウェットタオルなどで拭き上げて、アレルゲンをなるべく除去するのが有効です。
また換気をする際にも外から環境アレルゲンが室内に入り込んできます。
なるべくアレルゲンの侵入量を減らすためには、以下のような換気法が有効と思われます。
- 窓にレースカーテンを設置した上で10cm程度空けて換気する
- 花粉の飛散量が少ない午前10時までに換気する
黄砂やPM2.5に関するエビデンスは私自身把握できていませんが、花粉と同じような皮膚炎を引き起こす可能性があります。
これらの発生時期に一致して皮膚の調子が悪くなる場合は、花粉と同様の対策を取りましょうね。
最後に
さて今回は湿度が高い時期に悪化しやすい皮膚炎での、家での対策法を紹介しました。
もちろん「全ての犬猫やご家庭でこの対策が効果がある」という訳ではありません。
しかし季節性に皮膚炎や外耳炎症状が強く出る犬猫さんでは、本記事の対策を試してみる価値は大いにあります。
各ご家庭でやれる範囲内で、ぜひ試してみてくださいね。
もしこれら対策だけでも管理しきれない皮膚症状がある場合は、どうぞ当院へ一度ご相談ください。
たかつきユア動物病院(木曜・日曜・祝日休診 9:30-12:30、16:00-19:00)