院長の木村です。
本記事では、「犬の正しい抱っこの仕方」を解説します。
わんちゃんは正しい方法で抱っこしてあげないと、背骨や関節に負担がかかり、慢性関節炎の発症に繋がりかねません。
ぜひご自身やご家族の抱っこの仕方と比べてみてくださいね。
正しい抱っこの仕方とは
犬の正しい抱っこの仕方とは以下の通りです。
1.犬の身体のうち胸と骨盤を両手で支えながら横から水平に持ち上げる
2.必要に応じて手を持ち替える
3.抱っこ者の胸の前で、横向きに抱っこを維持する
※デモ写真は撮影できた時点で追加します
大切なポイントは、①どんなタイミングであっても背骨が地面と並行な状態をキープすること、②胸と骨盤の2点で必ず支えることです。
胸(骨)と骨盤は硬く曲がらない組織なので、この2点でリフトアップ・リフトダウンすれば、自ずと間にある背骨は地面に並行な状態が保たれます。
これが最も背骨や腰に悪影響が出にくい抱っこの仕方です。
イメージは自分の両手がクレーンゲームのアームになっている感じです。
こんな抱っこはNG!
逆にしてはいけない抱っこの仕方を列挙します。
・腕や両脇を手で支えながら持ち上げる
・片手で持ち上げて後躯が一瞬でも垂れ下がる
・縦抱き(肩に乗せる/コアラ抱き)
・仰向けの横抱き
理屈を簡単に解説していきます。
背骨が曲がると負担がかかる
我々ヒトが椅子に背中を曲げて座り続けると背骨や腰を痛めるように、わんちゃんも背中が曲がる力が加わり続けると徐々に腰を痛めていきます。
例えばわんちゃんを胸の部分だけで持ち上げたり支えたりすると、後ろ足の重みで背骨や腰が曲がってしまいますよね。
骨盤への支え無しで抱っこしたり上げ下ろししたりする動作を繰り返すと、そのたびに背中や腰の骨へ負荷がかかります。
間違った抱っこをし続けると何が起きるのか
4〜5歳までの若い年齢までは、経験上あまり症状は起きません。
しかし繰り返す負担により、水面下では小さな関節炎も繰り返し起きて、ついには背骨が変形し始め爆弾となっていきます。
そして慢性腰痛持ちになったり、シニア期でヘルニア症状を連発するようになったりします。
一旦腰を痛めるとずっと持病として抱える羽目になるので、わんちゃんのQOLをとても落とす結果となります。
抱っこに関する注意点
いくつか注意点も説明します。
小さなお子さんの抱っこに注意
小さなお子さんは力が弱い分、どうしても背骨が曲がる抱っこの仕方をしがちです。
難しいところはありますが、繰り返し正しい抱っこの仕方を説明してあげてください。
縦抱きに慣れさせない
身軽なわんちゃんでは、小さい頃から人の肩に手をかけるような縦抱きを求めることがあります。
しかし四足歩行の動物の背骨は縦に重力がかかり続けることを想定して出来ておらず、縦抱きは腰を痛める原因となります。
ご家族全員で協力して、”正しい抱っこをすると一番落ち着く”という状態に持っていきましょう。
手を持ち替える時に注意
人によっては手をクロスさせた方が抱っこしやすいという場合もあるでしょう。
一旦持ち上げてから手を組み替える際も、脇や肘の内側などを使って骨盤が垂れ下がらないよう常に支えておきましょう。
また最初から手をクロスさせた状態でリフトアップするのもおすすめです。
最後に
わんちゃんの正しい抱っこの仕方というのは、毎日する動作なのに誰からも指導を受けないですし、知らない方がほとんどです。
この記事を参考に、ご自身が正しい抱っこの仕方をできるようになれば、ご家族や周りの犬友達の方にも教えてあげてくださいね。
※余談:記事のサムネイルに使うイラストを探したら、ほとんど間違ったやり方のものでした。正しい抱っこの仕方が知られていないことを痛感します。