院長の木村です。

 

6月に入り雨も多くなって、蒸し蒸しした時期がやってきました。

 

湿気が高くなると増えてくるのが「外耳炎」。

 

外耳炎に気づかずに放ったらかしにしていると、耳は変質し治せない慢性外耳炎になる恐れがあります。

 

本記事では外耳炎のサインと動物病院で行う耳洗浄の仕方について解説します。

 

外耳炎は皮膚が強い子でもよく起きる症状ですので、しっかりと知識を付けておきましょうね。

結論

  • 外耳炎の治療は様々だが、一般的には耳洗浄と投薬を行う
  • 外耳炎のサインは割と分かりやすいものが多い
  • 治療が遅れて悪化すると、中耳炎や耳血腫など続発症も起きることがある

外耳炎とは

外耳炎とは鼓膜より手前側の外耳道に炎症が起きる病気です。

 

実はその原因は非常に多様で、治療期間も1回で終わることもあれば生涯続くこともあります。

 

身近な病気のくせに実は複雑で奥深い、それが「外耳炎」です。

外耳炎のサイン(犬猫共通)

まず外耳炎のサインから紹介します。

 

外耳炎を疑うサイン(症状)は以下の通りです。

ほとんどが行動を伴いますので比較的分かりやすいかと思います。

 

  • 耳の中を後ろ足で掻く
  • 耳の後ろあたりを後ろ足で掻く
  • 頻繁に首を振る
  • 床や物に耳を擦り付ける
  • 耳周りや耳の中を触ると後ろ足が小刻みに動く
  • 耳周りを触られるのを嫌がる

 

また、じっくり耳を観察すると分かることもあります。

 

  • 掻き跡(小さなカサブタ)がある
  • 出血している
  • 赤い部分(紅斑)と普通の部分とまだらな色をしている
  • 嫌な臭いがする
  • 黒っぽい垢が目立つ
  • 表面にジュクつきがある
  • 象の皮膚のように皺が走ってゴツゴツしている

 

このようなサインや症状があれば外耳炎の疑いが強いので、早めの受診をお勧めします。

ちなみに見た目は綺麗なのに起きている外耳炎もありますので、掻き行動があれば要注意です。

外耳炎の治療

外耳炎の治療は原因によって様々です。

※場合によっては食事変更をしたり、麻酔下処置をすることさえあります

 

一般的には耳洗浄と必要に応じて投薬(点耳薬や飲み薬)を行います。

耳洗浄

洗浄液(病院専用のものや生理食塩水など)を使って洗浄を行います。

 

またコットンと鉗子(物を挟むための医療器具)を使って汚れを拭き上げます。

 

病院によっては、拭き上げずに洗浄液の出し入れのみで汚れを回収する方法を取ることもあります。

 

ちなみにこれらの洗浄は耳の鼓膜手前までの汚れをターゲットにするため、トリミングサロンでの耳掃除とは意味が全く異なります。

 

「先日サロンで耳掃除してもらったばかりなのにこんな汚れが…」と心配される方も多いですが、それが普通と思ってくださいね。

投薬

耳洗浄を完了した後には、必要に応じて点耳薬を使います。

 

この点耳薬というのも実はたくさんの種類があり、病院や獣医師ごとの判断で使い分けています。

 

当院では以下の3種類の点耳薬を準備しています。

 

  • ローションタイプ:耳道が狭かったり耳毛が多い時などに使用
  • クリームタイプ:配合ステロイドが強いため炎症がひどい場合に
  • ジェルタイプ:長期作用型で自宅点耳ができない時に

 

外耳炎に対して基礎疾患(アレルギーなど)を疑う場合は飲み薬を併用することがあります。

 

基本的にはステロイドやアポキルですが、条件に応じてシクロスポリンやサイトポイントが使われることがあります。

※ただしサイトポイントは外耳炎には効きにくいとされています

外耳炎が悪化するとどうなるのか?

もし外耳炎に気付かなかったり、すぐ治るだろうと様子見して悪化したらどうなるでしょうか?

治療が長期化する

外耳炎は患っている期間が長いほど治療期間も長くなると言われています。

 

初期であればすぐ鎮火したはずの外耳炎が、1〜2ヶ月に亘る治療を必要とすることもあります。

QOLが低下する

外耳炎が悪化すると、動物はひどい耳の痒み(多くはもはや痛みを伴う)によってQOLが激しく低下します。

 

痒みで目が覚めることも多くなるため、寝不足となりイライラする様子が分かったりもします。

耳道が石灰化する

耳道の強い炎症が継続したり繰り返したりすると、耳内部の皮膚が固くなっていきます。

 

これは石灰化と呼ばれ、一度起きたら元の状態に戻ることは不可能です。

 

石灰化した耳道は慢性外耳炎の温床となるため、場合によっては耳道切除という外科手術が適応になります。

中耳炎になる

外耳炎が継続すると炎症が波及したり鼓膜が損傷したりして中耳炎が続発します

 

中耳炎になった場合は治療の長期化が確定しますし、外耳炎以上に動物のQOLが低下します。

 

膿まみれの耳汚れが家の中に飛んだり、臭いが常に漂うなどご家族も悩まされることになります。

耳血腫になる

外耳炎を起こした動物の多くは耳を掻き壊したり頻繁に首を振るようになります。

 

こういった耳への物理的刺激によって耳血腫が続発することがあります。

 

耳血腫とは耳道ではなく耳そのものの内部で出血が起き、こぶのように腫れ上がる病気です。

 

一度耳血腫が起きると多くが耳軟骨の変形を起こすため、治癒後も慢性外耳炎に悩まされるようになります。

最後に

外耳炎は身近ではありますが、だからといって軽く見て良い病気ではありません。

 

外耳炎が悪化すると最悪、生涯に亘る治療を余儀なくされる動物もいるくらいです。

 

全ての病気に言えますが大切なことは「早期発見・早期治療」です。

 

耳が変質・変形してしまう前に、しっかりと外耳炎のサインに気付いて動物病院を受診しましょうね。