院長の木村です。
犬や猫と暮らしている方のほとんどは動物たちの口腔トラブルと無縁ではいられません。
そして大部分の子は一生涯に最低1-2回程度の歯科治療が必要になります。
そんな歯科治療が必要になった時に飼い主としてどんな病院を選べばいいでしょうか?
本記事では犬や猫の歯科治療についての概要と、どうやって動物病院を選べばいいのかを私見を交えて解説していきます。
歯科治療の概要
歯科治療は大きく「内科治療」と「外科治療」に分かれます。
前者は抗生剤や鎮痛剤を使った管理、あるいはホームデンタルケアの指導などが該当します。
後者は麻酔をかけての歯石除去や抜歯など内科治療と比べるとやや大がかりな治療内容ですね。
外科治療は麻酔をかける前提になりますので、麻酔リスクの評価が必須になります。
一部施設では無麻酔でのハンドスケーリングを実施していることもあるようですが、私はハンドスケーリングについては反対の立場を取っています。
当院でも緊急的にやることはあるかもしれませんが、日常でのケアとしては不適切ですし「治療」にも該当しないと考えています。
本記事の結論
歯科治療をするのに向いている病院の条件は以下の通りです。
当てはまる条件が多いほど、適しているとお考えください。
- かかりつけの病院
- 小動物歯科の認定を取っている
- 歯科治療器具が充実している
- 外科治療が得意
- 麻酔が得意
- それなりの施術費用が必要
それでは一個ずつ条件の詳細を解説していきましょう!
かかりつけの病院
個人的に一番重要であると考えている条件です。
かかりつけ病院、つまりあなたの大切な動物さんのことを一番良く知っている獣医に治療してもらうということです。
病院での歯科治療はよくて鎮静、だいたいは全身麻酔下で行われます。
麻酔というのはどんな名医であっても事故リスクをゼロにすることはできません。
しかし、その動物さんの体調・既往歴・特殊な体質・薬への反応などを熟知していればしている分だけリスクを減らすことが可能です。
初めましての病院に歯科治療をお願いする場合でも、ほとんどのケースでは全身麻酔をかける前には術前検査を行います。
しかし、その時点のデータだけで安全性を解釈するより過去からの推移を知っていたほうがより麻酔リスクをより正確に評価できます。
もう一つのメリットは、かかりつけ医であればご家族の心情をなるべく汲み取った治療提案をすることが可能ということです。
獣医療は最終的には人と人との関係性が大切ですので、飼い主様のお考えやご意向を理解したかかりつけ医であれば教科書通りではないご提案ができます。
当院では獣医歯科治療の基本を則りつつも、画一的ではないオーダーメイドの治療をご提案しています。
歯科治療をしたいけれど様々な事情で二の足を踏んでしまっているのならば、ぜひ一度相談にお越しください。
ご不安な点を解消しながら歯科治療を進めていきましょう。
たかつきユア動物病院(木曜・日曜・祝日休診 9:30-12:30、16:00-19:00)
また当院ではオンラインセカンドオピニオンサービスを開始しております。
ご来院は難しい際のご相談は、こちらの利用をご検討ください。
麻酔が得意
先の麻酔リスクの話とつながりますが、小動物の病院での歯科治療はほぼ全身麻酔下であると思っていただいて構いません。
獣医は日夜、麻酔の安全性や方法論について情報を得てアップデートしていますが、それでも獣医の中である程度は麻酔の得意・不得意が出てきます。
歯科治療が必要になる子の多くはシニアであったり、心臓病などの持病を抱えたりして麻酔リスクが高くなっています。
より正確にそれらの麻酔リスクを評価して安全な麻酔を実施するためには、麻酔に関する知識・経験と設備が必要になります。
麻酔が得意かどうかは飼い主様からはめちゃくちゃ判断しにくい部分ですが、麻酔に関して強くアピールしている病院であれば少なくとも苦手ではないと判断していいかと思います。
日本では小動物麻酔の専門医や認定医はいませんので、残念ながらそういった資格情報では判断できません。
唯一考えるのであれば「日本小動物外科専門医」です。
こちらの資格を持つ先生であれば間違いなく麻酔に関しても強いです。
ただこの専門医資格をお持ちの先生は日本獣医外科のトップ層の先生方ですので、飼い主様が直接関わる機会は残念ながらほぼありません。
もちろん、専門医の資格を持ってないから麻酔が強くないということではありませんからね。
私が関わりのある先生方だけでも麻酔に強い一般臨床医はたくさんいます。
そこは各先生方の名誉のために明言しておきます。
単純に飼い主様からは判断しにくい条件というだけですので誤解の無いようお願いします。
小動物歯科の認定を取っている
日本にはいわゆる歯科の専門医制度というものはありませんが、同様のものに日本小動物歯科研究会の認定制度があります。
認定が無いから歯科治療が下手だったり苦手だったりするという訳では決してありませんが、認定があればそれだけ歯科治療に興味があり知識と技術を付けた証明となります。
少し話は脱線はしますが、小動物の歯科治療は人と比べると残念ながら劣っているのは間違いありません。
これは様々な理由が絡んでいるので獣医が単に努力不足という訳ではありませんけどね…。
その中で、わずかながら人間の歯科医と獣医師のダブルライセンスを取得されている獣医師がいたり、歯科医と連携して治療に当たる病院もあるみたいです。
私は歯科のお偉方でもありませんし論評する立場にはありませんが、獣医歯科より人の歯科のほうが進んでいる点を考えるとそれらは歯科治療においてアドバンテージとなるのではないかと考えます。
これらは病院HPの「あいさつ」や「院長紹介」などで判断することができます。
そういう強みがあれば絶対にHPに載っけますからね。
歯科治療器具が充実している
歯科治療器具というのは揃えようと思ったら様々な種類があり、それらを扱う知識と経験・資金力が必要になります。
また、歯科治療器具を豊富に揃えているということはそれだけ歯科治療に力を入れていたりペイできるだけの強みを持っていたりする病院ですので一つの判断基準となります。
個人的な意見としては、『根管治療』ができる病院と『歯科用レントゲン』がある病院は歯科に力を入れて器具を充実させていると判断していただいていいかと思っています。
病院HPの「施設紹介」や「器具紹介」などを参照してみてください。
ちなみに残念ながら現時点での当院では両方ともできません。
今後病院経営が安定し、力を集中できるようになったら設備投資をする予定です。
外科治療が得意
歯科治療には、口腔外科が絡む症例もあります。
病気の分野でいえば下顎骨折とか腫瘍が絡んだ切除とか含歯性嚢胞などですね。
こういった複雑な外科ができる、外科に強い病院はイレギュラーな歯科治療にも強いと判断できます。
外科に強いかどうかは病院HP上で「外科症例」や「治療実績」などを参考にしていただくといいかと思われます。
それなりの施術費用が必要
歯科治療に限らず、獣医療は自由診療ですので地域差や病院ごとの治療費に差があります。
ですので一概に〜〜万円以上なんていう表現は難しいですが、「思ったよりかかるな」という感覚になるのが「それなり」と思ってください。
なぜ費用が歯科治療に繋がるかというと、まず設備費用が関係しているからです。
動物病院はボランティアではありませんので、歯科治療専用の高額器具を導入したならば歯科治療で費用をペイしなければいけません。
また、歯科治療だけでなく麻酔に関連した器具(各種モニター)の導入・維持費用や麻酔管理に割くスタッフの人件費が「麻酔費用」そのものに乗っかってきます。
中には赤字スレスレで自分の命を削りながら薄利多売で頑張っていらっしゃる先生もいますが、通常の病院であれば一般的に「歯科治療の充実性=コスト」と考えていただいていいと思います。
もう一点は術前検査の費用です。
各病院の経営方針も影響しますが、安い術前検査費用は基本的に項目がかなり絞られています。
正確な麻酔リスクの評価はしっかりとした検査が重要になります。
低コストの検査が悪いとは全く思いませんが、明らかに安い術前検査費用は大切な何かの評価が抜けていると考えてもらって結構です。
最後に
本記事では歯科治療をしたい時にどういう条件で病院を探せばいいかをまとめてみました。
もちろん、これら条件に該当しなくとも良い病院はいっぱいあります。
私見を交えておりますので、その点ご了承いただいた上で病院をお選びください。
あなたの大切なご家族が良い病院で歯科治療をできることを願っています。