院長の木村です。
当院では2022年3月1日〜6月30日の期間に、春のフィラリア健診キャンペーンを実施しました。
※対象動物:犬
去年に引き続き数多くのわんちゃんに健診を受けていただきましたことを、地域の犬の健康管理の一端を担うものとして嬉しく思います。
さてせっかくの健診データですので、簡単な統計を公表したいと思います。
何か少しでも、皆様の今後の参考になれば幸いです。
ちなみに個体を特定できる情報は一切含まれておりませんので、ご安心ください。
【年齢】
健診を受けたわんちゃんの平均年齢は7歳4ヶ月で、中央値は7歳6ヶ月でした。
年齢別の件数内訳は以下の通りです。
- 7歳未満:44件(44.4%)
- 7歳以上10歳未満:22件(22.2%)
- 10歳以上:33件(33.3%)
【健診件数】
健診の合計件数は99件でした。
当院の犬登録数は406件ですので、単純計算では24.3%のわんちゃんが健診を受けていただいたことになります。
そして99件の内訳は血液検査が66件で、血液検査+画像検査が33件でした。
【健診内容】
当院の健診内容は検査種別2コース×年齢別3コースの合計6コースとなっています。
便宜上「お手軽」、「あんしん」、「しっかり」と名前をつけていますが、お手軽であっても充実した検査内容であると自負しています。
また高齢犬であっても「お手軽コース」を、若齢犬であっても「あんしんコース」や「しっかりコース」も受けていただけます。
健診内容については、オーナー様のご意向を伺いながら相談して決定しております。
血液検査(66件)
- お手軽コース 44件
- あんしんコース 21件
- しっかりコース 1件
血液検査+画像検査(33件)
- お手軽コース 13件
- あんしんコース 19件
- しっかりコース 1件
【異常】
健診を実施した中で、異常を検出した件数は45件(45.5%)でした。
異常臓器数別の内訳は以下の通りになります。
- 1臓器の異常:15件
- 2臓器の異常:20件
- 3臓器の異常:4件
- 4臓器の異常:4件
- 5臓器以上の異常:2件
また年齢別の異常検出件数(カッコ内は年齢別件数に占める割合)は以下の通りになります。
- 7歳未満:8件(18.2%)
- 7歳以上10歳未満:10件(45.5%)
- 10歳以上:28件(84.8%)
【総評】
まずは7歳未満のシニア期に入る前のわんちゃんが健診件数の半数弱を占めていることに驚きました。
地域のオーナー様の健康意識への高さが伺えます。
そして意外にも、その内18.2%のわんちゃんで1個以上の異常が検出されました。
この割合の高さは「若いから健診しなくても大丈夫とは言えない」ことを証明しています。
7〜10歳、そして10歳以上と歳を取るにつれて、やはり異常検出割合が増えていっています。
10歳以上に至っては、異常が見つからないわんちゃんは7頭に1頭しかいません。
※記載していませんが、異常臓器の平均個数も10歳以上で明らかに増えています
この検出された異常を基に、早期の治療介入を始めたわんちゃんも多数います。
※残念ながら健診後まもなく本格的に発症した子もそれなりにいます
人でも同じですが、獣医療の鉄則は早期発見・早期治療です。
声にならない臓器の悲鳴を早期に察知し治療介入を始めることは、健康年齢を引上げますしトータルの治療費も抑えられます。
また血液検査が全健診数の2/3を、血液検査+画像検査が残り1/3を占めています。
もちろん検査項目が多ければ得られる生体情報も多くなり、結果的には異常を検出しやすくなります。
しかし検査項目を増やすだけ動物の検査ストレスも、そして検査費用も増えます。
検査で治療が必要な異常を見つけたはいいけど、検査で体調悪化させたりその後の治療に結びつかず終いであれば健診の意味がありません。
検査と治療のバランスを相談しながら、健診は実施していきましょう。
さて当院では秋にも健診を予定しておりますので、春の健診を受けていないわんちゃんはぜひ積極的に受診いただければと思います。
また当院は「健康で合っても年に最低1回の健診」をご提案しておりますが、すでに持病がある動物はまた別の話です。
病状が安定していないのであれば1ヶ月〜3ヶ月で、安定していても半年に1回の定期検査をお勧めします。