院長の木村です。

 

高槻の皆様は健康診断の実施率も想像以上に高く、健康に対する意識も高いことが伺えます。

獣医師としてとても嬉しく思っています。

 

そのお話の中でやはり歯の健康・歯周病について皆様関心を強く持たれていることを感じます。

 

 

さて、HP上での記載の通り、歯の健康はとても大切なものです。

 

当院でも、開院2カ月で少しずつ歯の治療に進めた子がぽつりぽつりと出てきました。

歯の治療をどうするかは大きく分けて以下の通りです。

 

①家で色々デンタルケアを実施する

②抗生物質や痛み止めを使って急性の炎症を抑えていく

③病院で歯科処置をする

 

は症状を伴わない歯周病対策や歯周病を予防するための方法です。

各ご家庭の状況やその子の性格上で仕方が変わってきます。


当院では各種アイテムを揃えて受付前にディスプレイしております。

診察の待ち時間などに一度ご覧ください。

 

待合室ディスプレイ

 

 

さて、歯が痛くて食べにくいなどの症状が出ている場合は②または③の治療を考えます。

 

では一旦炎症を「止める」ことに主眼を置きます。

 

口腔内の歯周病菌を得意とするいくつかの抗生物質をメインとして、必要に応じて炎症止めを追加します。

通常は使いませんが、特殊な口内炎を併発している場合はステロイドを使ったりもします。

ただしこれはあくまで一時凌ぎであり、薬で炎症の元となる歯石を除去することはできません。


薬を切ってから歯石から徐々に細菌がまた増え出してどこかのタイミングで痛みが再発します。

再発する期間はその子の口内環境によるので一概に何日持つとか何ヶ月持つとかはお答えが難しいです。

 

そこで③の治療になります。

 

当院では基本的に全身麻酔下での治療をおすすめしています。

逆に、大人しいからと無麻酔下での治療(ハンドスケーリング)を希望されてもそのご要望にはお応えできません。

 

理由はいくつかあります。

 

1つ目はハンドスケーリングでは細かな汚れを取るのが難しいこと。

2つ目は歯石除去後の研磨が同様に難しいこと。

3つ目は痛みを伴う処置になるので、大人しい子でも痛みに体が反応して動く可能性があること。

※スケーラー(小さい鎌のような器具、先が鋭い)で眼や舌を刺してしまう恐れがあります。

4つ目は歯周ポケットを清掃できないこと。

 

以下の画像をごらんください。


器具(スケーラー)の先が歯周ポケットに数mm埋まっているのが確認できます。

 

※画像は処置後なので歯表面自体は綺麗になっています

 

 

ここに歯石が溜まります。

大概の歯石は炎症を伴うので汚い歯肉ごと削りいきます。

当然出血もします(というかさせます)しその分の痛みも発生します。

そして削り切った後に歯周ポケット用の特殊な歯科軟膏を入れて綺麗な状態を安定化させます。

 

さすがにこの処置を無麻酔で実施するのは動物達が可哀想です。

かといってやらないとポケットを起点に早々に歯周病が再発するので処置自体は必須です。

 

どうですか?これを見てもハンドスケーリングでも何とかなりそうでしょうか?

我々はそうは思いません。

やるからにはしっかりと清掃し、処置した価値のある状態まで持っていきます。

 

もちろん、持病により麻酔をかけられない・かけにくい子もいるでしょう。

その時は治療方針を①-③どれでいくか、または別の手段がないか一緒に相談していきましょう。

 

※実際に当院で歯科処置を行った症例のレポート記事もありますので、興味がある方はこちらもお読み下さい。

【獣医師監修】歯石除去治療のケースレポート【2022年7月】