院長の木村です。

 

早いもので、もう5月に入りました。

 

当院でも4月から多くの方に、狂犬病ワクチン接種でご来院いただいています。

 

その中で、よく質問いただくのが「混合ワクチンと狂犬病ワクチンはどっちを先に接種すればいいの?」という疑問。

 

本記事ではこれに獣医師として、個人的見解も込みで解説していきます。

 

しっかりと内容を確認し、飼っているわんちゃんにはどちらを優先すべきか判断してくださいね。

結論

  • 狂犬病ワクチンの接種は飼い主の義務であり、令和4年は特例措置により12/31までが接種期間
  • 接種期間内であれば原則は混合ワクチン接種を優先
  • 接種期間外であれば狂犬病ワクチン接種を優先
  • ただし法律に反しない範囲で例外あり

混合ワクチンと狂犬病ワクチンとは

まずはおさらいとして混合ワクチンと狂犬病ワクチンについて説明します。

混合ワクチン

混合ワクチンとは、複数種類のウイルスや細菌への抗体を上げるためのワクチンです。

 

ワクチンには犬ジステンパーウイルスや犬パルボウイルスを始めとしたウイルスや、レプトスピラという細菌の抗原などが入っています。

 

これらは「◯種混合ワクチン」と呼ばれるものです。

※◯には現在2〜10の数字が入ります

 

ただし「予防接種」という単語では、混合ワクチンか狂犬病ワクチンのどちらを指すかが人それぞれですので注意しましょう。

狂犬病ワクチン

狂犬病ワクチンとはその名の通り、狂犬病を予防するためのワクチンです。

 

狂犬病ワクチンの接種は法律で義務付けられており、毎年4/1〜6/30が予防時期と定められています。

※わんちゃんを飼い始めた最初だけは1ヶ月以内の接種

 

ただし現在はコロナ禍での密を避けるという理由もあり、令和4年は特例措置12月31日までOKとなっています。

清浄国である日本で狂犬病ワクチンを接種する意味について

実は日本はもう60年以上、国内での狂犬病発生は有りません。

 

なぜ発生の無い病気を予防する必要があるのでしょうか?

 

その答えは、「海外からウイルスを持ち込まれた時に流行しないため」です。

 

感染症は一度発生すると、一気に流行する(エピデミック、パンデミック)という性質を持っています。

 

その流行を防ぐためには、集団の予防接種率をある一定レベル以上に維持する必要があります。

 

狂犬病は人にとって非常に危険な感染症であるため、流行させないためには感染源となる犬の予防接種率を上げなければいけません。

 

ちなみにこの理屈は、コロナワクチンの接種率をやっきになって上げているのと一緒ですので理解しやすいかもしれませんね。

混合ワクチンと狂犬病ワクチンの優先順位は?

まずは日本は法治国家ですので、法律遵守という意味で狂犬病ワクチンが最優先となります。

 

しかし先の通りに今年は特例措置が出ておりますので、期間内であれば混合ワクチンを先に接種しても構いません。

 

さてこれだけだとイメージしづらいでしょうから、以降ではケースごとに解説します。

 

なお混合ワクチン接種の間隔は獣医師や各ご家庭の判断になります。

また当院は特別の事情が無ければ毎年1回の接種を推奨しておりますので、それに準じた解説というご理解をお願いします。

ケース1.混合ワクチンが1年以内接種で狂犬病ワクチンも直近で接種している

わんちゃんの飼い始めのタイミングなどで、狂犬病ワクチンを最近接種したばかりのケースです。

 

通常、混合ワクチンを1年以内に追加接種する理由はありませんので、狂犬病ワクチンの接種時期だけを考えましょう。

 

狂犬病ワクチンには実は「前回接種後から◯ヶ月は間隔を空ける」といった基準はありません。

 

当院では、飼い主様のご心配も鑑みて前回接種後から6ヶ月程度空けることを推奨しています。

※6ヶ月空けようとすると法律上の期間を過ぎる場合は、法律優先です

ケース2.混合ワクチンが前回接種から1年以上過ぎている

法律上の狂犬病ワクチン接種期間内であれば混合ワクチンが優先です。

 

なぜなら、現実に罹りうる病気を予防する意味では混合ワクチンのほうが重要だからです。

 

現時点では、日本国内にいながら狂犬病に感染する確率はほぼゼロですからね。

 

ただし、わんちゃんをホテルに預けたりサロンでトリミングを受ける際に今年度の狂犬病接種証明を求められる場合があります。

 

その用件の優先順位が高ければ狂犬病ワクチン接種を先にするのは有りです。

ケース3.混合ワクチンが1年以上過ぎて、狂犬病接種期間も過ぎている

基本的には狂犬病ワクチン接種が優先となります。

 

法律上の期間が過ぎても年度内に1回の接種が必要です。

ケース4.混合ワクチンと狂犬病ワクチン接種を早めに済ませたい場合

事情があり、なるべく短期間に混合ワクチンと狂犬病ワクチンの接種を済ませたい場合は狂犬病ワクチンが優先です。

 

なぜなら、狂犬病ワクチンを先に接種した方が次の混合ワクチン接種可能タイミングが早いからです。

 

当院使用のワクチンにおいては、

①混合ワクチンが先→1ヶ月後以降に狂犬病ワクチン

②狂犬病ワクチンが先→2週間後以降に混合ワクチン

となります。

 

病院によっては最短1週間後以降での接種となるかもしれません。

 

早く済ませたい場合は狂犬病ワクチン優先」と覚えてください。

最後に

さて、混合ワクチン接種と狂犬病ワクチン接種の優先順位とその理由についてご理解いただけたでしょうか。

 

ワクチン接種というのは犬を飼う上でごくありふれたイベントですが、その内実は意外とややこしいものです。

 

もし本記事内容とは別の理由で悩んでいる場合は、かかりつけ医に遠慮なくご相談ください。

 

当院へのお問い合わせは以下をご参照くださいね。

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