院長の木村です。
本日は尿検査と便検査のお話です。
当院ではどちらの検査も初診時から検査のみ(※)で来院いただくことが可能です。
※動物同伴なし、サンプルのみ持参
怖がりの動物で来院回数は極力抑えたいけど検査はしたいという方は新鮮なサンプルをご持参して来院ください。
検査内容にもよりますが、院内検査では結果判定に10-20分ほどお時間をいただきますのでご注意ください。
なお、結果説明は診察の順番通りになります。お急ぎの方は会計のみ済ませ後日の結果説明という流れも可能です。
それぞれの検査の詳細は以下の通りです。
尿検査
概略
尿検査は細菌性膀胱炎の診断のみならず、検査意義が沢山あります。
尿検査は院内検査(試験紙:後述1-8、顕微鏡:9)と院外検査(外注検査:10)があります。
必要量
院内検査では最低0.5ml必要です。それ以下の量では検査できない項目が出てきます。
また院内・院外によらず検査は必ず「液体」の状態で実施します。
ペットシーツに染み込んだものなど液体の状態で取り出せないものに関しては残念ながら目視による判断しかできません。
外注検査は一般的には2mlが必要になります。
※弁当などにつける魚型の醤油差しで約2mlです
サンプル採取方法
自然採尿:おすすめはペットシーツを裏返しにして撥水させたものをスポイトなどで回収する方法です。
他に、使い捨ての紙皿で受ける方法や専用器具(写真)を使う方法があります。
人工採尿:男の子であれば尿道カテーテルの挿入もしくは膀胱穿刺、女の子であれば膀胱穿刺で実施します。
自然採尿と比べ雑菌の混入が極めて少なくなり検査精度が上がります。院内で実施します。
全ての尿サンプルは新鮮なうちに検査をすべきです。
具体的には体外に出て半日以内にしましょう。
サンプルを採取してから保管は下の通りです。
・細菌性膀胱炎を疑う場合:冷蔵保存
・尿結石の定期検査や原因が未特定の場合:常温保存
検査項目
- 色、臭い:総合的な判断、炎症時特有の臭いあり
- 尿比重(濃さ)の低下:腎機能低下、ホルモン疾患、糖尿病などの評価
- 潜血反応:膀胱炎、腎結石の示唆、(採尿方法にもよるが)前立腺炎、腫瘍
- タンパク尿:膀胱炎、(採尿方法にもよるが)前立腺炎、腫瘍、腎機能低下、特殊な腎疾患
- 尿糖:糖尿病、ストレス反応(緊張や強い痛み)、特殊な腎疾患
- ビリルビン:胆嚢疾患、肝疾患
- ケトン体:糖尿病
- pH:結石、細菌性膀胱炎、食事療法の継続評価
- 顕微鏡検査:膀胱炎の程度と原因特定、タンパク尿の原因特定、腎機能低下、結石、特殊な肝疾患、腫瘍
- 外注検査:タンパク尿の定量評価、移行上皮癌の診断、細菌培養
結果判定
院内検査であれば当日10-15分での判定になります。
院外検査では検査項目によりますが数日から1週間ほど判定までに時間がかかります。
便検査
概略
便検査は院内検査(直接法:1、浮遊法:2)と院外検査(外注検査:3)があります。
下痢の状態、動物の年齢、症状、環境などから総合的に考えどの検査を選択あるいは併用するかを決定します。
検査精度としては外注検査>>浮遊法>直接法と思っていただければおおよそ問題ありません。
検査費用も同様で、特に外注検査は高価で一般的に1-2万ほどかかります。
院内検査は簡便・安価であり、遅くとも15-20分で結果が分かります。
但し浮遊法であっても精度は高くはなく、繰り返しの下痢や特に原虫を疑う場合は外注検査を検討します。
原虫疾患は特に検出率が悪く、浮遊法でも日を変えて4-5回実施してやっと検出されることもあります。
外注検査は圧倒的に検査精度が上がります。
検査項目は決まっていますが、治りにくい下痢の代表格である各種原因に高精度にアプローチできます。
必要量
直接法(検査項目参照)では極少量でも可能です。
浮遊法や外注検査(同上)では最低指先程度の便が必要になります。
水下痢の場合は実質量の関係上、参考程度の結果もしくは最悪検査結果が出ないこともあり得ます。
サンプル採取方法
よっぽど大量の異物が混入していなければ、採取できたものをそのままご持参いただいて大丈夫です。
検査が難しい例としては、水下痢をトイレットペーパーで拭き取って完全に染み込んだ状態や便に砂などが大量に混じった状態での外注検査提出などが挙げられます。
尿同様、なるべく新鮮な便で検査することが好ましいでしょう。
検査項目
- 直接法:細菌バランス、原虫、寄生虫、消化度合い、炎症
- 浮遊法:原虫、寄生虫
- 外注検査:犬猫の各種下痢パネル、PCR検査によって原因を探る(ウィルス、細菌、原虫)
結果判定
直接法は顕微鏡検査によって当日1分程度ですぐ結果が得られます。
浮遊法は10-15分ほどの静置が必要で、そこから顕微鏡検査に入ります。
外注検査は結果判定までに1週間程度の時間がかかります。
まとめ
尿検査、便検査ともにここから診断がつく可能性の高い重要な検査の一つです。
検査をご希望される場合は、新鮮なサンプルをご持参いただき受付に提出してください。
もちろん、診察と同時に検査することも可能です。
健康診断としての意味合いでも大切な検査ですので、どうぞお気軽に受診ください。
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