院長の木村です。

 

皆さんが動物さんを病院に連れていくと、診察でまず身体検査をしてもらうと思います。

 

その時、獣医はいったい何を診て何を頭で考えているのか。

 

ご存知ですか?

きっとご存知ないですよね。

 

本記事ではほとんどの方が知らないであろう身体検査の実態に迫ります!

 

全て臨床獣医師じゃないと絶対に書けない内容になっています。

 

獣医の仕事に興味があったり近くに獣医を目指している方がいらっしゃればぜひお読みください。

 

知っていると診察がちょっと面白くなるかも?!

身体検査って何?

まず身体検査とは何かを説明しましょう。

 

身体検査とは人間の五感を使って身体に異常が出ていないかをチェックする行為です。

五感とはつまり、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚のことです。

 

さすがに味覚は使いませんけどそこは雰囲気勝負ですので気にしたら負けです。

 

これから視診・聴診・触診・嗅診・その他項目・余談といった形で紹介していきます。

 

ちなみに書いてある項目を全ての動物で実施している訳ではありません。

大部分はチェックしますけどね。

 

実際にはその子が耐えられるストレスレベルのものを選んでおりますのでご了承ください。

 

また、病院あるいは獣医師によって色々な身体検査の仕方があります。

 

あくまでこれは私のやり方であって、必ずしも正解ということではありませんのでご理解ください。

視診

獣医が視覚を使ってチェックするのは実は待合から診察室に入るタイミングですでに始まっています

 

だからキャリーケースに入ったままで診察室に入るとちょっと情報量が減ってしまいます。

 

猫ちゃんは仕方ないですけどね。

 

飼い主様と挨拶しながら以下のような感じで見てます。

 

意識レベルや活動性はどうかな?

顔つきや歩き方などでどれくらいの治療強度が必要か推測します。

 

比較的ライトなら様子見や対症療法から開始も有り、やばそうなオーラが出ていたら最初から精査を提案します

 

今の機嫌はどんな感じだろう?検査に耐えられるかな

シャイな子では1回の診察でできる検査や治療の限度があります。

 

限界を迎えると暴れたり噛んだりする子もいますし、そうなったら検査の大部分が評価できなくなります。

 

ですので、その子の性格や今の感情を読むことは大切です。

 

歩き方、動作は問題ないだろうか

飼い主様が気づいていない関節や神経のトラブルはないかを確認します。

 

診察室だと雰囲気を察知して症状を隠す場合があるので待合での何気ない動きを見るのも大事です。

 

抱っこの仕方は間違ってないかな?

間違った抱っこはヘルニアや慢性痛の原因になるのでチェックします。

 

わんちゃんを縦抱きされる方が多いので、その場合は正しい抱っこの仕方をお伝えします。

 

飼い主様の感情はなんだろう?

不安、晴れやか、冷静、こういった感情を読み取って獣医に求めているものを推測します。

 

分かりやすい飼い主様なら表情だけで調子が良くなったかどうかとかも伝わります。

 

こんな感じで家でも甘えているんだろうか?

家での生活をイメージしながら動物と飼い主様の距離感を推測します。

 

あまりにも近いと分離不安症といって精神的なケアをする必要が出たりします。

 

逆に動物さんに慣れていないとか、「お互いに苦手にしてるな」とかも何となく分かります。

 

 

 

さて、動物さんを診察台に乗せたら続きの視診です。

 

 

 

乗せてからの機嫌は変化したかな?

診察台に乗せると感情が一気にマイナスに動く動物がいます。

特にチワワ、ミニピン、柴の子で多いです。

 

猫でもいますが品種というより個人差ですね。

 

太ったり痩せたりしていないかな?

基本は太ってるほうが多いですが、どちらにせよ食事内容指導の必要性を考えます。

 

全ての飼い主様の関心事なのでしっかりチェックしてお伝えします。

皆さん我が子の食生活に悩まれていますね。

 

視線の動かし方は正常だろうか?

重症になると周りを見渡す余裕が無くなってきます。

 

また、不自然な動かし方をしている場合は視力が無くなっている場合もあります。

疑わしければ視力検査をします。

 

充血や目ヤニ、角膜の透明度はどうだろう?

眼のトラブルがないか確認します。

目ヤニが多いと逆まつげやアレルギー、風邪などを考えます。

 

短頭種で非常に多いのですが実は慢性の角膜炎を起こしている子もいます。

 

顔つきは元気?それともしんどそう?痛そう?

意外と顔つきでも動物がどういう状況なのかの手がかりが得られます。

 

ただ、これは慣れというか経験値が必要ですね。

例えばどっかが痛い猫は仏様みたいな顔をしています。

 

口の動きや舌の動かし方、ヨダレはどうかな?

緊張だけなのか、気持ち悪さや口腔疾患があるのか判断します。

 

特に消化器疾患と口腔疾患では治療が全然違うのでその判断は重要です。

 

鼻水や鼻詰まりはどうかな?

幼い犬や猫で風邪症状が出ていないかを確認します。

 

鼻水も透明なものと膿っぽいものでは治療法が変わることがあります。

 

歯周病や歯肉炎はないかな?

臭いとともにチェックすれば歯周病の程度や歯肉炎の存在が分かります。

 

定期的に歯石の程度をみることで家でのデンタルケアの効果も分かります。

 

口の中に変なできものはないかな?

口のできものは悪性が多いのでついでに確認します。

 

動物が嫌がるので、そういう主訴が無ければ口を開けてまでは見ません。

 

耳汚れは無いかな?

外耳炎になっていても「掻き癖」として気にしていない方もいるのでほぼ必ず見ます。

 

重度外耳炎、軽度外耳炎、なりかけ、ほっといたら炎症する、良好みたいな分類をしています。

 

耳汚れは無くても多量の耳毛があったらそれで痒がる子もいます。

 

呼吸の大きさや回数は正常かな?

緊張の他に、呼吸器病や心臓病、または強い痛みでも早くなることがあります

 

チアノーゼが確認されたらまずは酸素吸入をしてから方針を立てます。

 

舌は真っピンクなのにハァハァしてたら熱中症か強い痛みを考えます。

 

震えは強くないかな?

過剰な震えは痛みを抱えていることを伺わせます。

 

診察台では震えて当たり前なので、病気かそうでないかの境目は非常に判断しづらいところです。

 

一応自分の中で基準はありますが職人芸なのでちょっと説明できません。

 

診察台での動きは正常かな?

動物の余裕さや神経的な異常または関節トラブルはないかを確認します。

 

発作兆候を持っている子は診察台で嗜眠(シミン)傾向だったり逆に過興奮だったりします。

 

皮膚に異常な赤み、湿疹、脱毛やフケはないかな?

おおよそのチェックポイントに異常があれば更に細かく確認します。

 

毛があると分かりづらいので光を当てたり逆さに毛をめくったりしてます。

 

趾間も皮膚異常の好発ポイントなのでチェックしていきます。

 

背中は丸みを帯びていないかな?

丸みがあれば筋肉量低下もしくは慢性関節炎を考えます。

 

ある意味、歳のせいなんですが原因を細かく考えると治療が見えてきます。

 

まずは正常ではないことを知っていただくところからですね。

 

後肢の置く位置や曲げ方は大丈夫かな?

これも異常があれば筋肉量低下や関節炎を考えます。

 

背中曲げ、中腰、後肢開きがちとかなら病気もしくは年齢性に筋肉が落ちてるかもと疑います。

 

毛艶はどうだろう?

栄養状態や内臓のトラブルを反映していたりします。

犬でもありますが特に猫で顕著な項目です。

 

歯周病や慢性腎臓病などで体重が落ちている子なんかは明らかに毛艶が悪く毛束ができます。

 

ご家族との関係性はどんな風だろうか?

一動作毎にすぐ抱っこされたりするのはご家族と動物との距離感が近すぎることを思わせます。

 

お互いに強く依存していれば、「可哀想」という理由で投薬等のコンプライアンスが低下する傾向にあります。

 

より丁寧な治療の意義の説明が必要になります。

聴診

心音や呼吸音は聴診器を使って確認します。

 

聴診器はちゃんと耳に付けると喋り声はほぼ聞こえなくなるし、両耳ずらすと今度は心音がまともに聞こえなくなります。

 

しょうがないので私は片耳だけずらして聴診しながらもう片耳で飼い主様の会話を聞いてます。

 

もし獣医が聴診しながら眼を瞑っていたり明後日の方向みていたらかなり集中して音を聴いています。

 

話しかけてもその声はまったく届かないので申し訳ないですが待っていてください。

 

心臓の音は大丈夫かな?

猫では聴診器の低周波側でも確認します。

聴診器の先をクリって回転させてたらそれです。

 

心雑音の種類、出ている強さ、出ている場所をイメージしながら聴きます。

 

心拍は正常かな?

雑音が無くても徐脈や頻脈等があればそれぞれ病気を考えます。

 

心臓病以外にも、徐脈はホルモン病や状態の悪化を、頻脈は痛みなどが推測されます。

 

ただし、大型犬とM・シュナウザーの大部分とM・ダックスの一部は元々心拍数が低いです。

 

呼吸音は大丈夫?

上部気道炎〜肺炎までを反映します。

 

ざっくりとした音の種類と位置関係からどういう原因が疑われるか考えます。

 

聴診に精通している獣医であればこれだけでもだいぶ病気が絞り込まれます。

 

鼻詰まり音は?

風邪症状や元々の鼻孔狭窄がないか確認します。

 

鼻詰まり音を聞くために耳を目の前に持っていくと動物が嫌がるでルーティンにはしません。

 

咳はしていない?

あれば気管炎や肺炎、気管虚脱、心臓病を疑います。

 

診察台では緊張により、咳はある程度抑えられます。

しかしその上で出てくるような咳であれば検査・治療対象になることが多いです。

 

鳴き声は普通?

風邪症状のひとつとして出ていないか確認します。

 

時々お留守番で鳴き続けていたなどをきっかけに発声器官が荒れて声が掠れる動物もいます。

 

触診

ノミ糞はないよね?

痒み症状が出ている子や野良系の猫ちゃんで確認します。

 

ノミ糞は黒い小さなフケのようなものです。

 

よく見ると渦巻いていることが多く、ティッシュなどで湿らせると赤錆色に滲んできます。

 

皮膚に異常箇所はないかな?

しこりや皮膚の隆起、伸び方などを確認します。

 

ただし、皮膚の触診はしっかり行うと動物へのストレスが強いので飼い主様から指摘がある場所に止めることが多いです。

 

皮膚や被毛のべたつきや乾燥は?

脂漏性皮膚炎や乾燥肌(アトピー等を思わせる)が無いかチェックします。

 

どちらも皮膚の痒みに発展することがあり、皮膚検査の提案をしたりシャンプー内容の確認をしたりします。

 

股動脈圧はちゃんと触れるかな?

血圧を間接的に評価できますし意外と不整脈の検出もしやすいです。

 

ただし股動脈圧が触れなくなるほどの低血圧は相当の重症なので、大腿筋を触るついでに念のためチェックするという程度です。

 

筋肉量はどうだろう?左右対称?

老化や関節系・内臓系のトラブル等があると異常が現れます。

 

大腿筋や背中の筋肉(ロースの部位)が元々大きくて分かりやすいです。

 

特に大腿筋で左右差がある場合、筋肉が薄い側に何か整形あるいは神経疾患を抱えている場合があります。

 

体型は問題なし?

肥満や削痩具合をより細かく見られます。よく聞かれる適正体重はこれで判断します。

 

「うちの子はどれくらいが適正体重ですか?」というのは頻出質問なので肩周りや腹回りの皮下脂肪で確認します。

 

ちなみに同じ品種でも骨格の大きさが異なるので本当に触ってみないと分かりません。

 

首は凝ってない?

凝りや張りがあれば頸部痛を疑い細かくチェックします。

 

特に「何をするでもなく震えてじっとしている」「急に鳴きだす」等の症状があれば頸は要チェックです。

 

耳に疼痛はない?

耳奥は検査器具を使わないと視診できないので触診でもチェックします。

 

痛みや内部のジュクつき、硬結感や熱感など炎症のサインを確認します。

 

耳は熱くない?

耳は真っ先に放熱し出すので体温上昇(発熱)を捉えられます。

 

直腸温が正常でも耳が熱ければ発熱し始めと判断します。

 

待合で緊張している時間が長い場合は体調不良ではなくても徐々に熱くなってきます。

 

腹部のじゅくつきは?

下痢がこの先起きそうかどうかや腸の浮腫の有無を判断します。

 

じゅくつきが存在するとある一定レベルの強さの腸炎を起こしていると考えられます。

 

腸の浮腫が感じられた場合は精査が必要になります。

 

腹部の痛みは?

内臓の痛み有りとして胃腸トラブルや膀胱炎、膵炎等を鑑別診断に入れます。

 

特に膵炎を狙う場合はバンザイさせた状態で触ると痛みで反応する場合があります。

 

腹部にしこりは?

お腹の中の腫瘍や異物閉塞がないかを見ます。

 

触って分かるものは結構な大きさになっているので直ちにエコー等の追加検査が必要です。

 

犬とは違い、猫では緊張してても腹筋が張らないので触診がしやすいです。

 

腹部に変な張りは起きていない?

ホルモン病腹水が溜まっていないかを確認します。

 

病気によって腹筋が薄くなって内臓を支えきれなくて中年太りのように張る場合があります。

 

他に、波動感といいますが水風船のようなポヨポヨ感が触れたら緊急疾患の可能性があるので即精査です。

 

乳腺にしこりは?

特に未避妊のシニアで乳腺腫瘍や乳腺炎がないか確認します。

 

小さい乳腺腫瘍と乳腺炎のしこりは区別が難しかったりしますが、どちらも治療対象になります。

 

特に乳腺腫瘍であれば早期摘出が必要になりますからね。

 

包皮炎は起きていない?

びっこだったり下腹部やペニスを気にする症状があれば包皮の中を確認します。

 

包皮炎は解釈がややこしい病気で、膿が出ても気にしない子と気にする子がいます。

 

気にしている子はペニスごと掴むと痛みでビクッと反応します。

 

咳は誘発されない?

頸の気管を圧迫して咳が誘発されたら気管炎もしくは気管虚脱の可能性を考えます。

 

病気が疑わしい子または咳が出るというお話がある時だけ触ります。

 

これが大丈夫なら気管炎や気管虚脱が無いという訳ではありません。

整形学的検査

特殊検査その1です。

びっこを引くとか足を上げるとかの症状が無ければ原則はしません。

 

膝蓋骨の脱臼や異常音はないかな?

膝蓋骨脱臼患者は極めて多く、そのまま慢性関節炎に発展している子が相当います

 

この項目はほとんどの犬でルーティンにチェックします。

 

膝の痛みはないかな?

関節炎を起こしていると膝の圧痛を示します。

 

リアクションが分かりやすいので、飼い主様の前で実演することが多いです。

 

脱臼のことは知っていても、そこからすでに慢性関節炎に発展していることに気づいていない方がほとんどです。

 

靭帯の損傷・断裂はないかな?

前十時靭帯断裂を疑う場合にのみ検査を実施します。

 

シニア・膝脱臼あり・肥満・運動量多い・急に後肢を付かなくなった、こういう症状の場合は怪しいです。

 

関節から異常音はないかな?

手先から順に関節炎や脱臼による異常音が出ないか確認します。

 

特にシニア猫(更にいえばスコティッシュフォールド)の子は要注意です。

 

隠れ関節炎持ちが意外と潜んでいます。

 

股関節はしっかり伸ばせるだろうか?

伸ばせないのは慢性関節炎を思わせる症状です。

 

膝のトラブルを抱えている子とシニア犬で多く見受けます。

 

若いトイ犬種で症状が起きていたら特殊な関節病を疑います。

 

指先に痛みは?

関節炎や趾間炎(皮膚炎の一種)やトゲなどの異物によって痛みが起きます。

 

特に注意したいのは趾間炎で、柴や痛みを強く訴えるタイプの性格の子で起きます。

 

びっこも引いてあたかも骨や関節トラブルのような症状を出します。

 

背骨や腰骨の痛みは?

飼い主様が気づかない痛みの代表格で、背中が丸い子の大多数は実は痛みを抱えています

 

痛みポイントは胸椎と腰椎の境目(最後肋骨の付け根あたり)に集中しています。

 

痛いところを触るとお腹にグッと力を入れるので実感するように飼い主様に触ってもらったりします。

 

首はスムーズに動かせる?

頸部ヘルニアなどの頸関節のトラブルがないか確認します。

 

頸部疾患を疑わせる特殊な症状が無ければ実施しません。

 

何もなかったのに検査で痛めるなんて嫌ですからね。

 

肩はしっかり動く?肘は?手首は?

前肢も後肢同様に順番にチェックしていきます。

これらは検査の仕方、順番が決まっています。

 

セオリーを外すと評価ができなくなったりします。

 

触られて嫌なところがあるだろうか?

現在のトラブルと過去のトラウマが反映されます。

 

特にトラウマである場合は記録しておいて、無闇に診察で触らないように注意します。

どんどん病院が嫌いになっちゃいますからね。

 

神経学的検査

特殊検査その2です。

これも神経疾患を疑う時以外は実施しません。

 

といっても、やり方や結果解釈を文字でお伝えするのが非常に難しいので省略します。

 

文字だけだと教科書みたいになるし、生体の仕組みを知らないと結果が意味不明ですので…。

嗅診

実際には嗅診という単語は使いませんが便宜上の表現です。

 

プライベートでは敢えて臭いものを嗅ぎにいくなんてしませんが、仕事では大事なのでしっかり確認します。

 

耳の臭い

独特の酵母臭を確認して、あればマラセチアの過剰繁殖を考えます。

 

飼い主様が耳が臭くて気になるという場合の体感半分くらいがこれです。

脂漏犬種のトイプードルの子なんかで多いです。

 

体臭

一部の動物で多汗症の酸っぱいような臭いがあります。

 

変なところに汗を掻いている子はその部位に慢性痛を抱えている場合があります。

 

皮膚症状なのに関節を検査するんですがちょっと不思議な感じですよね。

 

口の臭い

歯周病トラブルの存在やそちらへの治療効果の判断をします。

 

ご家族が口が臭いと認識するような子はその時点で歯石除去や抜歯の対象です。

 

※口臭が内臓トラブルを反映するかは分かりませんが、生死に関わる血便を出している子には独特の口臭があります

 

便の臭い

臭いの強さや種類で腸内フローラが乱れていないかをチェックします。

 

これだけで判断する訳ではありませんが、どれくらいの治療強度が必要か推測します。

 

軟便くらいであっても臭いが強烈ならガッツリ治療を考えます。

 

検温

五感とは違いますが身体検査のうちの1つですね。

動物は正常体温が38℃前後です

 

ただ、極度の緊張状態が続くと上昇し犬では39℃中盤くらいまでは上がります。

※稀に毎回40℃超えする犬がいます

 

猫では緊張であがっても39℃ちょうどくらいが限界ですね。

 

お尻周りがトラウマになっている子と柴犬にはほとんど検温しません。

直腸検査

特殊検査その3で、業界用語で直検(チョッケン)と呼ばれる身体検査です。

 

手袋に潤滑ゼリーを付けた状態で指を挿入しポリープの有無やオスであれば前立腺肥大・前立腺痛がないか確認します。

 

肛門や腸を損傷する恐れがあるので決して家ではやらないようにしてくださいね

 

他にも会陰ヘルニアや巨大結腸症の兆候も確認できます。

 

ちなみに牛を診ている獣医だと肩まで突っ込みます

身体検査って短い間にそんなにできるの?

身体検査ってこんなに見るポイントあるの?!ってびっくりしませんでした?

 

なるべく記載しましたが、多分まだ書き漏れているとこもあると思います。

 

もちろん毎回全部をチェックしている訳ではありませんが、診ているポイントはまぁまぁ多いです。

 

皆さんの動物さんが診察を受けたときの身体検査ってきっとあんまり長く無いですよね。

特殊なことをしなければ毎回1−2分だと思います。

 

しかも獣医は問診を取りながら検査することが多いです。

そんなんで本当に検査できてるの?って思いません?

 

結論から言うとできてます

 

自分の体ながら興味深いもので、職業として身体検査をし続けると体が勝手にスキャンしてくれるようになるんですよね。

 

それで、異常箇所があったら脳内アラームが鳴るのでそこを意識して細かくチェックするみたいな。

 

例えば自転車でも右に曲がりたいと思ってもいちいち歩道大丈夫→ハンドルを曲げて→体重を傾けて…なんて意識しないじゃないですか。

 

右に曲がりたいと思ったら勝手に曲がってますよね。

あんな感じに近いです。

 

さすがに自転車みたいに2週間で習得とかは無理ですけどね。

私が実用レベルでできるようになったのは獣医4年目くらいだった気がします。

 

脳は、疑われる病気を整理したり会話から情報を引き出したり次の検査とか考えることがいっぱいあるんです。

 

脳みそ君からしたら検査くらい身体だけでやっといてよって感じですね笑

 

もちろん全部が全部自動スキャンしてる訳ではないですよ。

 

特に主訴と関連しているところは最初から全部意識して確認してます。

「動悸が激しい気がする」→しっかり聴診みたいな感じです。

 

余談ですが、プライベートでは道行く動物さんはあまり見ないようにしています。

目が勝手にスキャンを始めて疲れるので笑

 

職業病ですね。

最後に

全部読んでいただいた方はありがとうございます。

 

飛ばし飛ばしで見た方にも獣医が結構な項目数を確認していることは伝わったのではないかなと思います。

 

身体検査は、昔のまともな画像検査機器が無かった時代の獣医がそれだけで病気を診断していたくらい重要です。

 

今は優れた検査機器があるので、意識しないとどうしてもそれらに頼りがちになってしまいます。

 

対して、身体検査は身一つ(小道具は要りますが)で行う古典的な検査ではあります。

 

しかし、習熟するほどに診断精度が上がっていく、今までもこれからも獣医療にとって重要な検査の一つです。

 

昔の獣医のゴッドフィンガーには及ばないにせよ身体検査は大事にしたいものですね。