院長の木村です。
本記事では、犬のマラセチア性外耳炎について解説します。
動物病院で「マラセチア性外耳炎」と診断を受けたわんちゃん、疑わしい症状を出しているわんちゃんのオーナー様は、ぜひ症状の見分け方と管理方法を理解しておきましょう。
マラセチアとは?
マラセチアとはどのわんちゃんの皮膚に常在する、ある種のカビ(酵母様真菌)です。
普段は大人しくしているこのマラセチアですが、何らかの要因で過剰増殖を起こすと外耳炎症状を起こしたり、症状をより悪化させたりします。
マラセチアの検査
基本的には動物病院にて、耳垢を染色(顕微鏡)検査してマラセチア増殖の度合いを確認します。
ただし時として、正常と異常の境目・グレーゾーンの増殖度合いとなっている場合もあります。
マラセチア性外耳炎とは?
厳密には「マラセチア性外耳炎」と言うのは誤りですが、便宜上、動物病院ではよくこの診断名が使われます。
※本記事でもそのように記載します
これはマラセチアが過剰増殖した結果、目に見える外耳炎症状を起こしている状況を指します。
マラセチア性外耳炎が起きている時点で何かしらの基礎疾患や原因がありますが、ともかくは目の前の外耳炎治療をする必要があります。
その時にはわんちゃんが耳を痒がったり痛がったりしていますからね。
マラセチア性外耳炎は治るのか?
マラセチア性外耳炎には、必ず最初期の炎症を起こしている”マラセチアではない”犯人がいます。
この犯人=基礎疾患が一時的なものであれば治りますし、体質的なものであれば生涯の付き合いとなります。
前者であれば適切な検査と治療によって軽快しますが、後者であれば自宅での皮膚管理や定期的な通院が必要となります。
※治らない場合でも、人側から見て「痒みや赤みが消えた」状態にするのは可能です
マラセチア性外耳炎の見分け方
先ほど「マラセチア性外耳炎は染色検査で判断する」としましたが、家ではどのように見分ければいいのでしょうか?
実はマラセチア性外耳炎は、獣医師でなくても比較的見分けが付きやすい病気です。
見分けるポイントは以下の通りです。
・油っぽいベトっとした黄色〜薄褐色の耳垢が多く見られる
・後ろ足で耳後ろを掻く動作や首を振る動作が多い
・耳から長時間履いた靴下のような、”すえた”ような臭いがする
これら症状は、あぶら症(脂漏症)が多いシーズー・ウェスティー・Mシュナウザーなどでよく見られます。
安定した人気を誇るトイプードルも脂漏症が多い犬種ですので注意しましょう。
マラセチア性外耳炎の治療と自宅管理法
発症時の治療
耳の痒みや臭いなどの症状があり動物病院でマラセチア性外耳炎と診断を受けたら、ほとんどの場合は外耳洗浄+点耳薬で治療を始めます。
マラセチアの量が多いなどの理由で、抗真菌薬の内服が指示される場合があります。
かかりつけ医の指示に従い、適切に治療を進めていきましょう。
安定時の自宅管理
症状が落ち着いている安定時では、基本的に自宅での耳ケアを行います。
脂漏症ですぐに耳がべたべたになるわんちゃんの場合は、数日〜数週間に1回の定期的な耳洗浄を行います。
この洗浄によって過剰な皮脂が落ち、皮脂を餌とするマラセチアの繁殖を防ごうという訳です。
自宅での耳洗浄は、基本的に綿棒を使わず洗浄液のみで実施することを推奨します。
洗浄の仕方は洗浄液の添付文書記載の方法で大丈夫ですが、嫌がっているところをひたすら押さえ付けて洗浄し続けると今後耳を触れない子になる危険もありますので注意しましょう。
また耳毛が炎症を起こしたり増悪させている疑いがあるわんちゃんでは、定期的な耳毛抜きを実施したりします。
それ以外にも外耳炎を頻繁に繰り返すわんちゃんに対しては、1週間に1回程度の予防点耳をしてもらうこともあります。
何を気をつけたらいいか
まず、痒みや赤み、耳の臭いがきつくなったなどの症状があれば、粘らずに動物病院を受診してください。
積極的に早期治療介入をした方が、結果的に治りもスムーズとなります。
落ち着いている時期では、定期的に耳の状態の目視をしたり掻き行動がないかチェックしましょう。
またかかりつけ医から耳毛抜きを指示されている場合は、自宅で抜くか病院もしくはトリミングサロンでの耳毛抜きをお願いしましょう。
フードに関しては基礎疾患としてアレルギーを疑う場合には、アレルギー用の療法食が最適です。
その他、かかりつけ医から指示が出ていることがあれば、しっかりと遵守しましょう。
最後に
マラセチア性外耳炎はとてもありふれた耳の病気である一方、慢性化したり基礎疾患がややこしいと生涯にわたる治療が必要になったりもします。
治療と管理で大切なのは「自宅で異変に早く気づくこと」、そして「早期に動物病院を受診すること」です。
梅雨など湿気の多い時期には耳トラブルが多発しますので、しっかりと管理してわんちゃんに快適な生活を送らせてあげましょうね。