院長の木村です。
本記事では、「猫のくしゃみに鼻血がまじった時に考えられる病気」について紹介します。
もしかして、その鼻血には重大な病気が隠れているかもしれません。
しっかり知識を付けて、いざという時にスムーズに判断できるようにしておきましょう。
結論
- くしゃみは、風邪のほかアレルギーや歯周病から起きることもある
- 中高齢猫のくしゃみに鼻血が混ざったら腫瘍の可能性に注意
- 鼻血を見つけたらまずは動物病院を受診する
猫のくしゃみの原因と治療
猫がくしゃみする原因には以下の通り、大きく5つあります。
- 生理的なくしゃみ
- 猫風邪
- アレルギー
- 歯周病
- できもの(腫瘍、ポリープ)
それぞれの具体例やメカニズムを1つずつ見ていきましょう。
1.生理的なくしゃみ
くしゃみとは本来、息をする時に吸い込んだホコリやゴミを体外に排出する生理的な機能です。
それは我々人も猫も変わりません。
鼻の粘膜にたくさんある毛細血管は、ちょっとした拍子に切れて出血することがあります。
ですので生理的なくしゃみでもたまに鼻血が出ることがあります。
この場合はくしゃみや鼻血が連発しないかをまず確認して、1−2回で止まるようであればそのまま様子見してもらって大丈夫です。
2.猫風邪
猫を飼っている方にはお馴染みの猫風邪です。
正確には猫上部気道感染症と言います。
その原因には有名な猫ヘルペスウイルス1型、猫カリシウイルスのウイルス類の他、クラミジアや細菌の感染もあります。
これらの病原体の感染は鼻粘膜の炎症を起こして毛細血管を弱くさせるため、猫は鼻血が出やすい状態になります。
猫風邪を引いた場合、くしゃみ以外にも涙目・目ヤニ、鼻水、発熱、声が掠れるなどの症状がありますので、怪しかったら動物病院に連れていきましょう。
猫風邪に伴う鼻血には、猫風邪そのものへの治療と並行してネブライジング(霧吸入)をすることがあります。
あまりに出血がひどい時は止血剤の投与を考える場合もありますがそこまで行くことは稀です。
3.アレルギー
実は人や犬同様に猫にもアレルギーを起こす場合があります。
きまった季節にくしゃみ症状がひどくなったり、換気したり掃除機をかけた拍子にくしゃみが出るようであればアレルギー性鼻炎を考えます。
猫のアレルギーの診断としては、症状から推測する他にIgE検査というアレルギー血液検査をすることが可能です。
検査費用としては一般に1.5-2万円程度とやや高めですが、結果によってアレルギーを強く疑う根拠ができた場合は積極的な治療を展開できるため検査する価値は十分あります。
アレルギー性鼻炎に伴う鼻血である場合は、環境療法やステロイドを含む抗アレルギー系薬剤の使用、ネブライジングなどで治療していきます。
4.歯周病
歯周病からくしゃみ、鼻血が出る場合があります。
特にシニア猫に多いですが、歯周病により歯根(特に上の犬歯)感染がひどくなっていくと鼻粘膜まで炎症が広がることがあります。
歯周病を見分けるポイントは以下の通りです。
- 口が臭い
- 涎が多い
- 口を気にして掻いたり、くちゃくちゃすることがある
- 口を触られるのを嫌がる
- 犬歯が伸びた印象がある
- 歯茎が腫れている
特に最後2つに注意してください。
上の犬歯の歯茎がこんもりしていて歯自体が伸びていれば、歯根感染を起こしている可能が高いです。
歯周病が原因で鼻血が出ている場合、姑息的には抗生剤等の内科治療、根本的には歯石除去や抜歯を含めた歯科治療にて対応します。
5.できもの(腫瘍、ポリープ)
最後にちょっと怖い話です。
一般的には中年齢以上の猫での話になりますが、腫瘍が隠れていてくしゃみや鼻血を起こしている場合があります。
初期の段階ですと、くしゃみや鼻血はあるものの散発的だし元気食欲も問題無いということもあって病院に連れていかず自宅で様子見されることが非常に多いです。
つまり発見が遅れて治療が困難になるケースがあるということです。
猫の鼻腔内腫瘍では、リンパ腫や腺癌などが多くあります。
しかし、一般的な動物病院で確定診断することは難しいため、腫瘍の可能性を考えるのであればCTを備えている病院へ紹介受診していただき、画像検査や鼻腔内生検を実施します。
一見は猫風邪っぽい症状であっても、治療に全然反応しないような場合は積極的に腫瘍の存在を疑う必要があります。
鼻の腫瘍を疑う場合は以下の通りです。
- 散発的にくしゃみや鼻血が出て、徐々に程度や頻度が悪化する
- シニア/歯が綺麗/風邪を引いたことがない、という条件が揃っている
- 診断的治療(抗生剤や抗ウイルス薬等)に対して反応しない
- 左右の目の高さがズレている
- 鼻筋やその近くの頬が腫れているように見える
特に後者2つの顔面変形が見受けられたらなるべくすぐに動物病院を受診してください。
様子見を続けると、治療できていたものが手遅れになる可能性があります。
ポリープに関しては腫瘍と違ってむしろ若い猫で出る傾向があります。
こちらも画像検査や組織検査が必要になりますが、診断して外科切除をすれば予後は良好となります。
まとめ
- くしゃみは、風邪のほかアレルギーや歯周病から起きることもある
- 中高齢猫のくしゃみに鼻血が混ざったら腫瘍の可能性に注意
くしゃみによる鼻血には様々な原因があります。
鼻血は獣医師からするとなるべく一度診察に来てほしい症状です。
なぜなら、飼い主様が思っているよりずっと重大な病気が隠れている可能性があるからです。
細かな治療方針について、患者猫の性格や薬を飲めるかどうかなどで色々違いがありますので、鼻血が出たらまずは動物病院を受診して相談しましょうね。