院長の木村です。
さて、皆さんは『猫のフィラリア症』についてご存知でしょうか?
フィラリア症は「猫の突然死の原因の1割」とも言われる恐ろしい病気です。
フィラリア症にかかる猫を一頭でも少なくしたい!そんな思いから2月からキャンペーンを実施することにしました。
猫のフィラリア症とは
犬の病気でお馴染みのフィラリア症ですが、実は猫にも感染することがあります。
フィラリアは細長い糸のような虫で、その子虫を『蚊』が媒介します。
地域にいるフィラリア感染動物を吸血するとその子虫が蚊の体内に入って、次に吸血する動物に感染させるという仕組みです。
感染して間も無くであれば予防薬(厳密には駆虫薬)で退治できますが、時間が経って血管内に侵入し肺血管まで虫が行ったら手出しができなくなります。
そのため月に1回の予防が非常に大切な病気なのです。
もし猫のフィラリア症について知らない・あるいは聞いたことはあるけど詳しくないという方はまずこちらの記事をお読みください。
【獣医師監修】猫のフィラリア症について
【猫のフィラリア予防キャンペーン】概要
犬のフィラリア予防キャンペーンに先駆けて、2022年2月から開始します。
【開始時期】2022年2月1日〜6月30日
【対象動物】体重0.5kg以上、6週齢以上の全ての猫
【必要検査】シーズン投薬前の心雑音チェック(心雑音が認められた場合は追加で心臓エコーを実施します)
【投薬期間】レギュラーシーズンとして4月中開始〜12月中終了の9ヶ月間、ご希望により通年予防も有り
【薬の種類】①月に1回の滴下剤(猫専用、首筋に垂らす薬です)または②内服薬(効能外使用)
【薬の費用】①>②、②は犬の予防薬と同等です(詳細は獣医療広告ガイドラインによりここには記載できません)
キャンペーン期間中はまとめ買いがお値打ちになります!
なぜ今【猫のフィラリア予防キャンペーン】を開始するのか
猫のフィラリア症は、動物病院スタッフでは存在を知られているものの飼い主様の認知度は残念ながら低い病気です。
しかし、認知度が低いから大したことのない病気かと言われるとそうではありません。
実は怖いことに猫の突然死の1割がフィラリア症と言われています。
猫のフィラリア症は犬と違い生前診断が非常に難しく、死後の病理解剖で判明することがほとんどです。
症状は咳(猫では風邪や喘息をまず疑います)や嘔吐や食欲不振程度ではっきりしないため、報告されている数よりも潜在的な症例数は多いのではないかと推測されています。
もしあなたの大事な猫ちゃんがフィラリア症にかかってしまったらできることは多くありません。
とにかく予防するしかない病気なのです。
逆に言えばしっかりとシーズンを通して予防すれば理論上は100%感染を防ぐことができます。
猫のフィラリア症ガイドラインでは通年(つまり1年中!)予防が推奨されているくらいです。
猫のフィラリア症は突然死の原因となるような重大な病気にも関わらず、認知度が低く予防率は大変低い病気です。
ぜひともこの状況をここ高槻市から変えていきたいと考えキャンペーンを思いつきました。
ウチは完全室内飼育なのに予防する必要あるの??
あります。
少し古い調査ですが、2008年に行われたものでは地域猫と飼い猫で抗体陽性率(フィラリアに感染した形跡)がほぼ同等であることが明らかにされています(※)。
※佐伯英治 先生(サエキベテリナリィ サイエンス代表)が獣医学雑誌に寄稿されていますが、内容は著作権の関係上記載できません。
室内飼育とは言え、常に家を密閉している訳にはいきません。
昨今のコロナ禍では逆に例年より意識して換気をするご家庭のほうが多いでしょう。
ですのでどうしても家に蚊が侵入してくることは避けられません。
蚊は動物が吐く二酸化炭素や発する体温を察知して寄ってくるので、「猫だから刺すのは止めよう」とはなりません。
ウチはマンションの高層階なんだけど…
それでも予防する必要があります。
蚊の飛翔能力を調べた文献によれば、高度25-35m地点でも15%の蚊が採集された事実があります。
高度25-35mといえばマンションで例えると8-12階の高さです。
もしそれ以上の階層にお住まいの方であればフィラリアの感染リスクが相当に低いと判断できるため予防する意味は薄れますね。
わんちゃんみたいに予防前に採血は必要ないの?
必要ありません。
犬では必ずシーズンの投薬前に血液内の子虫を調べる血液検査をしますが、猫ではしなくても大丈夫です。
なぜなら猫でフィラリアに感染した場合に、血液内に子虫が現れる期間が200日後からのわずか30日程度しかありません。
実際にはしなくて大丈夫というよりは、もし感染していてもほぼ検出できないからする意味が無いというニュアンスですね。
もし心雑音がある場合は、心臓エコーにてフィラリアが確認できる場合もありますので心音チェックだけはさせていただきます。
予防を始める際には基本的に身体検査のみで、猫ちゃんへのストレスは最小限に済ませますのでご安心ください。
具体的にはどういうお薬を使ってどれくらいの費用がかかるの?
使用する予防薬は①滴下剤、②内服薬のいずれか一種です。
どちらも月に1回の使用でOKです。
具体的な金額をHP上に記載するのは「獣医療広告ガイドライン」に違反する恐れがあるためできません。
ただ高槻市での猫のフィラリア予防習慣を定着させたいという思いがありますので、まとめ買いの方には割引を入れさせていただきます。
①滴下剤
当院イチオシの猫用予防薬『ブロードライン』を使用します。
ブロードラインはフィラリア以外にノミ・マダニ・ミミダニ・ニキビダニなどの外部寄生虫の他、条虫を含む多種のお腹の寄生虫にも効いてくれる優れものです。
そして首筋に垂らすだけの滴下剤ですので、ご家庭でも簡単にご使用いただけます。
反面、滴下剤の感触(皮膚や毛のベタベタ感)を気にする猫ちゃんにはあまり向いていないかもしれません。
『ブロードライン』は猫専用の予防薬として認可を取っています。
ただし、②の内服薬よりかは少し値段が高めです。
②内服薬
こちらは犬用で認可を取っている予防薬を使用します。つまり効能外使用ですね。
猫にとってはほぼフィラリアのみの予防効果となります。
なぜ犬用の予防薬を使うかといいますと、猫用でフィラリア単独の予防薬が無いからです。
Elanco様が販売されています『ミルベマックス フレーバー錠』が猫用で認可されている内服予防薬ですが、こちらにはフィラリア予防成分に加えて『プラジクアンテル』というお腹の寄生虫の駆除成分が入っています。
もちろん入っていても安全面では大丈夫なのですが、完全室内飼育で必要の無い駆虫薬が入っているのもご抵抗があるかと思います。
複合剤はどうしても値段が上がってしまいますしね。
当院としては自信を持っておすすめできる①の『ブロードライン』を去年一杯フィラリア予防薬としてご提案してきましたが、これはミルベマックスよりも更に幅広い複合剤です。
「フィラリアは予防したいけどウチの子には要らない成分が入っているのはちょっと…」という方にもおすすめできるように考えたのが②の内服薬と思ってください。
それに滴下剤が苦手な猫ちゃんには内服薬のほうが向いているのも利点ですね。
効能外使用は大丈夫なの?
猫用で認可を取っていない薬の効能外使用は自己責任であることは事実です。
しかし、先に出ました猫用のミルベマックスにも配合されているフィラリア予防成分のものを使用しますのでご安心ください。
ミルベマックスに準じて体重0.5kg未満、生後6週齢未満の猫ちゃんには使用致しません。
※ただし、当院使用における考えと『ミルベマックス フレーバー錠』の安全性についてはなんら関係しないことをここに明記しておきます
また当院使用の内服薬に配合されている予防成分は元々、猫のフィラリア症ガイドラインにも予防薬として記載されているものになります。
それでも、「フィラリア予防はしたいけど効能外使用は怖い…」という方は①の猫専用滴下剤をご選択ください。
最後に
繰り返しになりますが、猫のフィラリア症は認知度の低さとは裏腹に突然死の原因にもなる危険な病気の一つです。
しかし月に1回投薬すれば必ず予防できますので、フィラリア予防にご興味を持っていただいた方はこのキャンペーンを機に始めてみてください。
大切な我が子の命と健康を守るため、できることがあります。