院長の木村です。

 

本記事は犬と猫の肛門腺のしぼりかたについて現役獣医師が解説します。

 

爪切りとともに日常のケアとして大事な肛門腺しぼり。

 

必要が無い子は気にしなくても構いませんが、多くの子は定期的にしぼることを必要とします。

 

肛門腺が詰まりやすい子では月に1回、詰まりがひどい子では2週間に1回絞らなくていけない場合もあります。

 

動物病院では基本的に肛門腺絞りの対応は可能ですが、元気なのに毎回絞るためだけに休みを作って通わなければいけません。

 

そんな肛門線絞りをあなたができるようになったらグッとケアが楽になると思いませんか?

 

本記事には自宅でできるようになるための手順をできるだけ分かりやすく図解しながらまとめました。

 

まず一通り最後まで見て、それからスマホやタブレットなどで記事の頭に戻って見ながら実践してみてください!

肛門腺を絞る準備

できたらご自身の他にもう1人、動物を動かないように支える役がいると楽です。

 

あとティッシュを数枚+動物用のウェットティッシュかアルコールフリーのウェットティッシュを1枚用意してください。

必要なものはこれだけです。

 

まだちゃんと絞れた経験の無い方はティッシュなしで風呂場で絞ることをおすすめします。

 

また、肛門腺が大きくなって(溜まって)いそうなタイミングで挑戦するといいでしょう。

まず肛門腺を触る!

肛門線は肛門の(時計で言う)4時と8時の方向についている袋状の組織です。

 

文字よりも図の方が理解しやすいので図に合わせて順に説明していきますね。

 

まず肛門線の位置関係を横から見ると①のようになっています。

※図は右利き用のものですが、左利きの方は頭の中で図を反転してイメージしてください。

しっぽを下げた普通の状態では肛門腺はだいぶ奥まった位置にあり触るのは困難です。

肛門腺図横通常

肛門線を絞るためにはしっぽを持ち上げる必要があります

 

利き手じゃない方の手でしっぽを持ち上げましょう。

 

さて、しっぽを持ち上げる角度ですが②の程度が限界です。

 

直角以上に上げようとすると痛くて動物が暴れるのでしっぽの上げすぎには注意してください。

 

しっぽを持ち上げることで肛門腺が肛門手前(図②でいう右方向)まで寄ってくるイメージです。

 

肛門腺図横挙上

だいぶ溜まって大きくなっている子であればこの時点で指の腹に半球状の肛門腺が触れるはずです。

 

私は左手でしっぽを上げ右手の親指の腹で左肛門腺を、人差し指と中指の腹で右肛門腺を触りにいきます。

ここらへんはご自身のやりやすいスタイルで構いません。

 

この時点で肛門腺が触れたらほぼ勝ち確です

今度はお尻の正面から見てみましょう!

肛門腺から伸びた中身の通路は肛門の3時と9時辺りに出口があります。

絞る方向は③のとおりに、通路が出口に向かう方向と同じです。

肛門線縦挙上

頭の中で②の横図も合わせて3Dにして位置関係をイメージしてください。

 

中身を絞る方向が見えてきましたね?

 

そう、中心へ向かってやや上方向かつ手前方向です

肛門腺の絞り方

肛門腺が触れて頭の中に位置関係がイメージできたら、後はもう絞るだけです。

楽勝ですね。

 

さて、まず絞り方ですが肛門腺の半球の奥側から手前に力をかけて絞ります。

 

使いかけの歯磨き粉でも封を切ったレトルトパウチでも必ず奥から絞りますよね。

原理はあれと一緒です。

 

肛門腺の奥端をイメージして指をかけ中心に向かってやや上・手前方向にじわじわと力をかけていきます

 

中身が液体メインの出やすい子では、指で硬めのイクラを潰すくらいの力を2秒、3秒と長めにかけていきます。

 

一瞬ガツンと力をかけるのではありませんよ。

あくまでジワジワとかけていきます。

 

中身が固形化していたり、固形成分が通路を塞いで出にくくなっている子に対しては指でプチプチを潰すくらいの力をやはり長めにかけていきます。

 

肛門が光に照らされている環境なら肛門の3時と9時にある出口(肛門腺開口部)が開くのがわずかに観察できるかもしれません。

※開くといっても1mmとかのレベルです

 

肛門腺絞りに慣れ始めた方なら用意したティッシュ越しに絞ると周囲に臭い中身が飛び散らずに後処理が楽になります。

 

しかし、まだちゃんと絞れたことのない方は臭かろうが素手で挑戦することをおすすめします。

 

大丈夫です。手ならしっかり何度か洗えば臭いは落ちます。

最後に

もう肛門腺の膨らみが感じ取れないのを確認したら肛門腺しぼり完了です。

 

最後に用意したウェットティッシュで肛門やその周りの毛を軽く拭き上げて終了しましょう。

 

肛門腺絞りは、”まぐれ当たりではなく位置関係を理解した上で”成功すれば次からはめちゃくちゃ楽になります。

 

言ってしまえば1回目の成功が一番難易度が高いです

 

その1回目を成功させるコツを余すことなく解説したつもりですので、本記事を見て自宅で肛門腺を絞れる人が増えることを楽しみにしています!

肛門腺を絞る上での注意点

肛門に対して真正面に立って絞るのは止めましょう

肛門腺の中身は液体であれば、まぁまぁの勢いで飛んできます。

 

真正面に立って絞ると衣服に臭い中身が飛び散りますし、もしあなたの目に入ったら角膜炎や結膜炎を起こす危険性があります。

 

必ず動物の体に対して直角の位置に立って行いましょう。

風呂場で行いましょう

1回でもしっかり絞った感覚を理解して成功体験を積めばティッシュやガーゼ越しでも絞れるようになります。

 

しかし、まだちゃんと絞れたことのない状態でティッシュ越しに肛門腺を触るのは厳しいので素手でチャレンジすることをおすすめします。

 

ただ、その場合には周囲に臭い中身が飛び散りますので必ず風呂場で行いましょう

 

リビングのカーペットとかに飛び散らせたら数日くらい後悔する羽目になります。

力を入れすぎない

中々肛門腺の中身が出てこないと知らず知らずのうちに指に力が入ってしまいますよね。

 

仮に指の色が変わるくらいに力を入れていたならば、それは入れすぎです。

 

肛門腺は内臓の一つですからそんなに強くできていません。

過剰な指圧は肛門腺にダメージを与えて肛門腺炎を起こす危険性もありますので注意しましょう

 

力をかける方向さえあっていれば基本的に先に述べた程度の力で出るはずです!

痛がってたら無理はしない

カチカチに中身が固まったり炎症を起こしていたりする肛門腺は絞ろうとしたらかなり痛がります。

 

後ろ足で思い切り蹴りに来たり噛むそぶりを見せるようなら、まず動物病院で絞ってもらって肛門腺がどういう状況かを確認することから始めましょう。

シニア猫ではしっぽを上げすぎない

大部分のシニア猫では人が中々気付けない『しっぽの痛み』を抱えています

 

直角すら厳しい子もいますので70°くらいに留めておくと無難です。

 

特にシニアで後ろ足をヨタつかせながら歩いている子はほぼ100%痛み持ちですので注意してください。

しっぽが短かったり断尾している子は難易度大幅アップ

犬や猫には最初からしっぽが短い子もいますよね。

 

フレブルに代表されるしっぽが短い犬種やコーギーのような断尾された犬種です。

交通事故などでしっぽを切らざるを得なかった猫もいるでしょう。

 

さて、彼らでもしっぽを上げずに絞れる子は多いですが、中身が固かったりすると獣医でもお手上げです。

 

その場合は直腸内から絞る特殊なやり方になりますので諦めて動物病院に行きましょう。

特にしっぽの短い犬はかなりの高難易度になります。

追加資料

当院のものではありませんが、分かりやすい動画はこちらです。

 

実際の動画も見てイメージを膨らませたい方はぜひご参照ください。

(今後当院のチャンネルを解説したら動画を作るかも…)

 

【MAHチャンネル】宮田動物病院沼津 様

【肛門腺の全てを集約】獣医師が絞りながら解説【3つのパターン】

 

他にも調べてみたい方は肛門「線」絞りではなく肛門『腺』絞りで検索をかけてください。

 

プロは絶対に腺と記載しています。

 

もし肛門腺を絞るために練習したいというご希望があればどうぞご来院ください。

 

実際に一緒に絞ってみましょう。

 

たかつきユア動物病院(木曜・日曜・祝日休診 9:30-12:30、16:00-19:00)

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