こんにちは、院長の木村です。
ついに春の予防時期が到来しましたね。皆さんはもう済ませましたか?
さて本記事では、タイトル通りに「春の予防で動物病院へよくあるF&Q」をまとめてみようと思います。
ぜひ参考にしてくださいね。
ワクチンに関するF&Q
何のワクチンは注射しなきゃいけないの?
必要なのは狂犬病ワクチンと混合ワクチンです。
狂犬病ワクチンは法律で接種義務が定められており、毎年4月〜6月が接種時期となります。
混合ワクチンに法的な義務はありませんが、しっかりと接種して重大な感染症を予防しましょう。
混合ワクチンって何?
混合ワクチンは基本的に、犬の健康に重大な影響を及ぼす感染症を予防するためのワクチンです。
一般的に接種されるのは5〜10種の混合ワクチンです。
使用されるワクチンの種類は動物病院毎に異なりますので、必要であれば事前に種類について問い合わせましょう。
ショップから来たばかりの犬の混合ワクチンの接種回数は?
現在はほとんどの子犬で2ヶ月に満たない時期に初回ワクチンを接種しています。
この初回ワクチンはかなり効果が薄いため、追加で最低2回(つまり幼齢期に合計3回)の接種を推奨します。
ただし獣医師の判断で、合計2回接種や逆に4回以上の接種となる場合があります。
混合ワクチンは1年に1回接種しないといけないの?
動物病院や獣医師のスタンス、あるいは患者の健康状況等により、毎年の接種推奨〜複数年に1回接種を推奨と判断が分かれる場合があります。
当院では、日本で実施されている若齢期のワクチン接種プロトコールや使用されるワクチン製剤の添付文書内容を考慮し、原則1年に1回の追加接種を推奨しています。
狂犬病ワクチンは1年に1回接種しないといけないの?
その通りです。
狂犬病予防法により犬の飼い主には毎年のワクチン接種が義務付けられています。
獣医師の指示によってその年の接種を猶予することが可能ですが、これは「そろそろ歳だから…」などと自己判断する性格のものではありません。
混合ワクチンと狂犬病ワクチンは一緒に打てないの?
原則として期間を空けて別々に接種しましょう。※添付文書の記載等より
各ワクチンの種類にもよりますが、狂犬病ワクチン→混合ワクチンは1週間以上を、混合ワクチン→狂犬病ワクチンは4週間以上空けての接種を推奨します。
ただし獣医師や動物病院の判断により、同時に接種する場合もあります。
混合ワクチンと狂犬病ワクチンはどちらが優先?
ケースバイケースで優先順位が変わります。
かかりつけの獣医師と相談しましょう。
フィラリア予防に関するQ&A
フィラリアって何の病気?
「フィラリア症」は蚊が媒介して犬や猫等に重大なダメージを与える寄生虫症です。
犬では主に肺動脈に寄生し、心臓病など致死的な症状を引き起こします。
病気を予防するためには、蚊の出るシーズンに合わせて投薬する必要があります。
フィラリアの予防ってどうするの?
フィラリアの予防薬には様々な種類がありますが、昔から主流なのは月に1回投与する内服薬タイプです。
また近年ではノミダニ予防効果を合わせた複合予防薬が人気です。
一部の病院では注射によって通年予防する場合もあります。
フィラリア予防期間は?
フィラリアの予防期間は、蚊が出始めた日の1ヶ月後〜蚊が出なくなった日の1ヶ月後です。
当院(大阪)では4月〜12月をシーズン予防としていますが、地域によって推奨期間は異なる場合があります。
またここ数年では通年予防をするケースが増えてきています。
夏場だけの予防じゃダメ?
一般に蚊は気温15℃を超えたら活動するとされています。
多少の地域差はありますが、春や秋でもフィラリアの感染リスクが有ります。
夏場だけの予防は、文字通り夏場の感染リスクだけ無くしている状態です。
外に出さないから予防しなくていいよね?
いいえ、予防を推奨します。
なぜなら換気や人の出入り等で蚊は侵入するため、屋内でも感染リスクがあるからです。
猫のデータではありますが、完全室内飼育猫と地域(野良)猫でフィラリア抗体陽性率が同等という報告があります。
フィラリア予防薬を食べなくて困っている
対応策は、①強制投与の仕方を習得する、②別の予防薬に切り替える、③注射薬に切り替えるなどがあります。
予防薬の多くは美味しいフレーバーが付けられていますが、どうしても動物の口に合わない場合があります。
投薬に困っている場合は、予防を諦める前にかかりつけ医に相談しましょう。
去年の余りを飲ませてもいい?
使用期限以内のものであれば問題ありません。
ただし、フィラリア症のシーズン予防の前には原則として血液検査が必要となります。
予防を始める前に、かならずかかりつけ医に相談や確認をしましょう。
知人からもらった予防薬を使ってもいい?
使用期限以内であれば原則は使用可能です。
ただし各種の安全管理上の確認事項がありますので、使用する前に必ずかかりつけ医に確認しましょう。
途中から予防薬の種類を変えても大丈夫?
問題ありません。
ただし複合剤を使っている/これから使う場合はノミダニなど他の予防効果についても考慮する必要があります。
注射剤を使っている場合は、その予防効果が切れた以降での変更を推奨します。
予防薬はペットショップやホームセンターで買える?
ペットショップ等での購入はできません。
フィラリア予防薬は獣医師の専門的知識が必要な「要指示医薬品」ですので、動物病院での処方が必要です。
どこの動物病院にも必ず予防薬は置いてありますので、まずは受診しましょう。
ノミダニ予防に関するQ&A
ノミダニ予防はする必要あるの?
外に出る動物であれば、予防することをお勧めします。
特にドッグラン、河川敷、公園の草むら、アウトドアなど、自然物との接触機会が多い動物では積極的に予防すべきです。
病院にて、予防・駆虫効果が実証されている動物用医薬品を処方してもらいましょう。
ノミ被害はどんなもの?
動物がノミに寄生されると、①皮膚トラブル、②他の動物や人への伝播、③瓜実条虫の感染、④多数寄生での貧血が起きます。
また家屋のノミ駆除をするために、害虫駆除の専門業者に依頼するところまで行く可能性があります。
ノミは山間部〜都市部で広範囲に被害が起き得ます。
ダニ被害はどんなもの?
ダニ寄生ではノミ同様に皮膚トラブルや貧血が起こる症状以外にも、特殊かつ(場合によっては)致命的な感染症等を引き起こすことがあります。
一旦寄生を始めたダニは、慎重な虫体除去や駆除剤での駆虫をする必要があります。
ダニは山間部を中心に被害が起き得ます。
ノミダニ予防薬は何を使えばいいの?
動物病院で取り扱いがある動物用医薬品での予防を推奨します。
予防薬には、1ヶ月毎、3ヶ月毎などの使用頻度、経口剤、滴下剤などの剤型により様々な種類があります。
近年ではフィラリアとともに予防が可能な複合剤が人気となっています。
ノミダニ予防の時期は?
当院では4月〜12月を推奨していますが、地域により予防時期に大きく差があります。
冬場では気温低下によって活動性が落ちますが、それでも自然物と接触機会が多い動物では被害が起きます。
外で活発に活動する動物に関しては、通年予防しておくことを推奨します。
人への影響は?
ノミやダニ(マダニなど)は人獣共通感染症であり、人への被害が起こります。
特にマダニ寄生では、SFTSなど人が重症化する疾患を起こすことがありますので注意が必要です。
ノミやダニはライフサイクル上、一定期間を環境中や家の中に落下し潜んで生活します。
最後に
本記事では「春の予防で動物病院へよくあるF&Q」と題して、予防に関しての情報をまとめてみました。
これ以外にも疑問点がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。
当院での予防薬の処方をご希望の場合は、外来にて動物を連れてご来院くださいね。
大切な動物たちのために、しっかりと必要な予防をしましょう。