2021.11更新
※本記事はスコティッシュフォールドの飼い主様に向けてまとめています。
院長の木村です。
スコティッシュフォールドの関節症についてご存知でしょうか?
知っている方は、おそらく関節炎が「よく起きる」、「起きやすい」という風に見聞きしたかと思います。
実は折れ耳のスコティッシュフォールドでは、関節炎が「よく起きる」のではなくて「100%発症」します。
この事実を含めて、スコティッシュフォールドを飼っている方は特有の関節症について知っておく必要があります。
病気に対する知識があれば大切な猫ちゃんのわずかな変化や違和感に気づきやすくなります。
猫ちゃんの健康的な未来のためにどうぞ最後までお読みください。
スコティッシュフォールドと関節症
スコティッシュフォールドが発症する関節症は「骨軟骨異形成症(コツナンコツ・イケイセイショウ)」という遺伝病です。
この遺伝病は『耳折れ』とリンクしており、まんまるのスコティッシュらしい顔をしている子は100%発症するとされています。
骨軟骨異形成症の症状
骨軟骨異形成症では、関節の骨が膨らんでうまく動かせなくなっていきます。
症状としては下記が挙げられます。
- 四肢すべて、またはどこかの跛行(ハコウ=びっこ)
- 動きがゆっくりになったりジャンプしなくなる
- 関節が硬く膨らむ
- 体を触ろうとすると嫌がる・痛がる
- しっぽが動きにくくなる、動かせなくなる
- 慢性痛のため常にイライラ・攻撃的になる
骨軟骨異形成症の発症時期
実は骨が成長する若齢期(〜満1歳)から進行が始まります。
「進行が始まる=症状が出る」とは限りませんので注意してください。
今、ご自身のスコちゃんが骨軟骨異形成症がどのくらい進行しているかどうかは関節のレントゲンを撮影することで判断できます。
ちなみに骨軟骨異形成症は折れ耳タイプのスコティッシュフォールドに特徴的な病気ですが、「立ち耳タイプだから出ない」という訳ではありません。
遺伝学的にすべて解明はされていませんので、折れ耳以外の遺伝要因も関係している可能性があります。
どう治療するの?
残念ながら骨軟骨異形成症の進行を止めることは不可能です。
ですので、治療といっても治すというより鎮痛をしてQOL(生活の質)を維持することを目的とします。
治療法は以下の通りです。
- 外科:骨瘤の切除、術後に進行が早まる恐れあり
- 放射線:疼痛緩和を目的
- 鎮痛剤の長期使用:同上
- サプリの長期使用:同上
外科や放射線治療については治療成績のエビデンスが少なく、また実施できる病院も限られています。
一般な治療は鎮痛剤やサプリの長期使用といった内科管理となります。
予防はできないの?
残念ながら予防もできません。
折れ耳タイプのスコティッシュフォールドたちの中でも骨軟骨異形成症の重症度はそれぞれ違いますので、発症せずに済んでいる風に「見える」子はいるでしょう。
しかし、全ての折れ耳タイプの子で骨軟骨異形成症は大なり小なり進行しますし、そしてフードや生活習慣に気をつけて予防できるものではありません。
疼痛をなるべく抑えるために、はっきりとした痛み症状が出ていないうちからサプリを開始することは猫ちゃんのQOL維持にとって有用です。
ただし、残念ながらサプリを早めに開始しても予防自体はできません。
鎮痛薬は何を使うの?
すでに骨軟骨異形成症による疼痛が出ている猫ちゃんには、「メタカム」もしくは「オンシオール」の長期使用(1ヶ月以上)を考慮します。
(当院ではオンシオールを採用しています。)
ただしこれらNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれる鎮痛薬は腎臓病の猫ちゃんには使いづらいため、すでに腎臓病である子には別の鎮痛薬を考える必要があります。
オンシオールを使用できない猫ちゃんにはガバペンチンやトラマドール、ブプレノルフィンといった特殊な鎮痛薬の使用を考慮します。
骨軟骨異形成症に使えるサプリとは?
サプリに関しても明確な治療のエビデンスはありませんが、当院でおすすめするのならば「アンチノール」になります。
アンチノールには抗炎症作用のあるω-3脂肪酸が豊富に含まれています。
サプリである以上「効きます」とお伝えはできませんが、給与する価値があると考えています。
当院では多くの慢性の関節痛に悩まされているわんちゃんや猫ちゃんにアンチノールを処方しています。
そして「よくジャンプするようになった」、「足取りがしっかりするようになった」などの行動変化に満足いただいて継続されている方が大半です。
「アンチノール」は動物病院専売製品となりますので、もしご興味がある方は当院までお問い合わせください。
たかつきユア動物病院(木曜・日曜・祝日休診 9:30-12:30、16:00-19:00)
まとめ
折れ耳タイプのスコティッシュフォールドは全ての猫で大なり小なり「骨軟骨異形成症」という特殊な関節症を発症します。
そしてはその関節症は、骨が成長する時期という驚くほど若齢から進行していきます。
完全に予防する手立ては現在の獣医療では残念ながらありません。
しかし、それでも炎症に伴う慢性関節痛からなるべく解放してあげるべく折れ耳タイプのスコティッシュフォールドの子には早期にサプリの給与を始めてもいいかもしれません。