院長の木村です。
本記事は猫の尿石症と寒さの関係性について解説していきます。
さて、今(10月初旬)はまだ汗ばむこともありますが、これから秋が深まり寒くなってきます。
寒くなるとどうなるのか?
そう。
尿石症の時期が到来します。
どうして寒いと尿石症が増えるのか?
尿石症にならないための対策とは?
1ランク上の健康管理のために、どうぞ最後までお付き合いください。
猫の尿石症とは
尿石症とは、腎臓・尿管・膀胱・尿道の尿路系に結石が出来る病気です。
猫ではストルバイトが約3割、シュウ酸カルシウムが約6割で2種類だけで9割も占めています。
2大尿石症というわけですね。
若い子ではストルバイトが、高齢ではシュウ酸カルシウムが多く発生する傾向にあります。
後述しますが、ストルバイトは「溶ける」石でシュウ酸カルシウムが「溶けない」石です。
どうして寒くなると尿石症が増えるのか?
答えは「飲水量が減るから」「排尿間隔が開くから」です。
当たってましたか?
ヒトも含めて生き物の身体はホメオスタシスといって正常な状態を保とうとします。
寒いと感じて服を着込むのも、無意識で身震いして熱を作り出そうとするのも正常な体温を維持しようとする身体の働きです。
冬に冷たい物をがぶがぶ飲む人はそうはいないですよね。
やっぱり自販機ではホットコーヒーなりあったかいお茶なりを買ってしまいます。
※冷たいビールは飲んじゃうのがほんと不思議ですよね
猫も同じです。
体が冷えるのが分かっているから冷たいお水はあんまり飲みたくないんです。
自然、最低限だけ飲水量を確保して後はなるべくあったかいところでぬくぬく過ごします。
水場が寒いところなら輪をかけて水を飲まなくなってしまいます。
こたつに入ってたら寒い廊下に行きたくなくなる原理と一緒です。
飲み物取りに行く人はジャンケンで決めるし、なんならちょっとトイレも我慢してたこともありますよね。
水も飲まないしトイレも我慢するし、想像したらいかにも身体に悪そうです。
尿石の発生には体内でのおしっこの滞留時間も影響するのでトイレを我慢すると尿石ができやすくなります。
尿石ができたらどんな悪いことが起きるのか
尿石というのは塊です。
細い尿管や尿道を通過するときにその塊が引っかかって進まなくなるとおしっこが体外に流せなくなります。
おしっこは常に腎臓で作られ続けるので流せなくなったおしっこは体内で逆流したり腎臓内で停滞したりします。
そうなると半日〜1日で猫は急性腎不全に陥ってしまいます。
急性腎不全は即座に命に関わる病気ですので、重症化に気づかずに様子見していると手遅れになり最悪亡くなってしまいます。
自宅でどうにかできるものではありませんので、即座に病院に連れて行く必要があります。
尿石は急性腎不全以外にも慢性腎不全の原因にもなります。
腎結石を併発しているとざらざらした石が腎臓組織を傷つけ持続ダメージを受け続けます。
腎臓組織は一度傷つくと正常には治らないので、臓器が耐えられる限度を超えると腎数値が上昇し体調不良を起こします。
それ以外にも尿管結石や尿道結石で尿路閉塞を繰り返し起こしていたらやはり腎臓は疲弊し慢性腎不全へと進行します。
膀胱に結石がある場合は、ざらざらした石が膀胱粘膜を常に傷つけるので膀胱炎が慢性化したり繰り返し起きるようになります。
尿石ができてしまったら
対策方法はできた尿石がストルバイトとシュウ酸カルシウムかで違います。
猫ではどちらも食事内容の影響が大きいため、新たにできないようにするには食事療法が大事になってきます。
ストルバイト
ストルバイトは「溶ける」タイプの結石です。
こちらは食事療法によって内科的に完治(厳密には寛解)できる可能性があります。
各メーカーから色々な療法食が出されていますので、それらの中から食べやすい・続けられそうなものを選んで食べさせます。
シュウ酸カルシウムもそうですが、結石が無くなったからといって元の食生活に戻すと再発する可能性が高いです。
ストルバイトは細菌によって二次的にできる場合がありますので、菌感染を疑う場合は抗生剤を使用します。
シュウ酸カルシウム
シュウ酸カルシウムは「溶けない」タイプの結石です。
猫の腎結石や尿管結石はほとんどこちらと言われています。
条件が揃えば自力で体外に排出できることもありますが、ある一定以上の大きさになってしまったら外科手術が待っています。
内科的にはこちらも療法食によって治療します。
目的としては今ある結石を無くすことではなく新たにできなくさせるということです。
最近では多くの療法食がストルバイトとシュウ酸カルシウムの療法に対応しておりますのでどちらの尿石症でも選択の幅は広くなっています。
治療に関しての詳細はコチラの記事をお読みください。
【獣医師監修】尿石症の治療方法やその期間は?
尿石が予防するようにはどうしたらいい?
とにもかくにもまず必要な飲水量をしっかり確保することです。
必要な飲水量は体重計算もできなくないのですが、フードの種類や量によって結果がズレます。
それより下の水分診断が1分でできますのでまずリンク先に飛んで試してみてください。
体重とかフードのグラム数とかはだいたいの感覚でいいですよ〜。
診断結果はどうだったでしょうか?
おウチの猫ちゃんは十分飲水量を確保できているでしょうか?
できていたらばっちりですね!
この調子です!
尿石用療法食を食べていないのに過剰に飲んでいるようなら一度病院で血液検査をしてもらいましょう。
もし足りないなら次に進みましょう!
飲水量が足りていない状態を解消するには
飲水量が減るのは「身体が冷えるから」なので、まず単純に考えてみましょう。
①部屋を暖かくしてみる
水場やそこへの移動ルートも含めて暖かくしましょう。
そもそも身体を暖かくさせる作戦です。
②水を温かくしてみる
我々のホットドリンクのようにホットウォーターにしてしまうの手です。
とは言っても30-40℃くらいまでですけどね。
指を入れたらじんわり温かいくらいに調整しましょう。
ただ、これでは冷えたら何回も取り替えなきゃいけないという面倒さがありますよね。
そこで無いかなと思って調べたらありました。
そう、加温ボウルです!
こちらは直接加温するタイプですね。
紹介しといて申し訳ないですが、今調べたばっかなので使い勝手についてはお伝えできません…。
手間要らずで便利ですがコード類の噛み癖がある子にはあまり向いていないでしょうね。
こちらは真空断熱の保温タイプですね。
加温タイプよりかは取り替えの手間は増えますがどの子にも安心して使えますね。
探せば循環式かつ加温式のものもあります。
根気に調べてみるとご自宅の合う製品が見つかるかもしれません。
③次は食べ物の種類を考えてみましょう
ドライフードを食べている子なら、寒い間はウェットフードを足すもしくは切り替えのも手です。
水分量はドライ10%に対しウェット70-80%と圧倒的に差があります。
水分だけでいったらウェットパウチを1日100g食べたらドライを1日700g食べたのと同じです。
その水分差を埋めるためにドライをふやかすという作戦もアリです。
デメリットはウェットが乾くと食べてくれなくなる点と食費が上がる点でしょうね。
前者はがつ食いタイプなら気にしなくていいですがダラダラ食いタイプだと気づかないうちに痩せる場合があります。
食費はまとめ買いとかでちょっとは安くなりますが、同ランク帯の商品なら絶対に上がります。
病院らしく療法食の話をすれば、おすすめは断然ロイヤルカナン様の「ニュータードケア」です!
尿石ができにくいように成分が調整されており、不妊後〜シニアに入るまで長く使えます。
そして低カロリーで太りにくく食物繊維で満腹感も得られる。
尿石用療法食ほど強力にコントロールできませんが、作りが優しい分いろんな猫ちゃん(特に多頭飼育で本領発揮!)に使えます。
もう1点、フードというかサプリメントですがネスレ様の「ハイドラケア(Hydra Care)」です。
水よりねっとり感があり、舌に絡みやすく効率的に水分を摂取できます。
美味しさを増すためにチキンレバーが入っていますのでアレルギー持ちの子はご注意ください。
この製品を通常の食事と併用して水分アップするのもいいですね。
これらは動物病院専用製品になりますのでご興味がある方はどうぞお問い合わせください。
たかつきユア動物病院(木曜・日曜・祝日休診 9:30-12:30、16:00-19:00)
④飲水環境を工夫してみる
寒くなくても飲水量が常に少ない子は飲水環境を変えてあげることで飲むようになるかもしれません。
例えば陶器など違う材質の水皿に変えてみるとか、サイズを変更してみるとか。
流水が好きなら循環式給水機は試してみたいところです。
他にも水場そのものの位置を変える、水場を増やすのも良いですね。
仲が悪い猫ちゃんがいて常に緊張状態があるなら、リラックスできる環境づくりをすれば安心して水を飲んでくれるかもしれません。
尿量や排尿回数に注意してみる
通常の猫ちゃんでは飲水量と排尿量は連動しています。
※連動していなかったら何かの病気ですので要来院です
ですので排尿量が分かれば間接的に飲水量も分かることになります。
そういった時はRABO様の「Catlog」を導入するのもいいかもしれません。
私は現在猫を飼っていないので試せないですが、多頭識別もできるということで便利そうですよね。
尿量変化のデータがあれば、何かの工夫を試したときに飲水量アップの効果があったかどうかが分かります。
終わりに
猫の冬の尿石症は動物病院にとっては風物詩のように感じるほど季節の影響を強く受けます。
ご自身の猫ちゃんが尿石症予備軍でないかどうかを調べるには尿検査でpH値や微細な結晶が出ていないかで確認できます。
当院では猫を伴わずとも、新鮮な尿を持参いただければ検査が可能ですのでご心配な方はぜひ本格的に寒くなる前に検査を受けに来てください。
また、尿石症は元々は体質や食事の要因が大きい病気ですので検査結果を基に食事内容の相談をしていきましょう。
冬は猫の健康診断に力を入れる病院も多くあります。
そういった健診セット(血液検査やエコー検査など)を利用するのも身体の状態を把握する上で役立ちます。
全ての猫ちゃんで最低1年に1回の健康診断が推奨されておりますのでぜひご検討ください。
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