院長の木村です。
皆さん療法食ってどこで買っていますか??
一番多いのは恐らく病院だと思いますが、通販全盛のこの時代、Amazonや楽天など通販サイトで購入する方も少なからずいらっしゃいます。
ホームセンターやペットショップでも売っていますしね。
しかしそれは本当に大事なわが子のための行動なのでしょうか。
今回は、療法食をネットで買う行為の是非についてまとめてみます。
療法食とは
まずは療法食についてのお話しです。
療法食は食べ物アレルギー、尿石症、腎臓病など様々な場面で、その子の体調にあったものを提案して処方するものです。
例えば尿石症治療だと専用サプリメントもあったりしますが、それでも療法食なしでは私は治せる気がしません。
それほどに重要で、時には薬以上に活躍してくれる大事な治療アイテムです。
療法食は、基本はそれ単独で栄養を十分満足できるような配合をされていて、なおかつ病気に合わせた調整をされています。
ところが療法食というのは尖った性能・効果を出すために、ある意味クセモノのような性質を持っていたりします。
本当は獣医の指導が必要
例えば尿石フードは塩分が強めだったり、腎臓フードはリンやタンパク質含有量の制限をかけたりしています。
最近の療法食のトレンドとして、より専門的に、より細分化した機能を持つようになってきています。
肥満かつアレルギーの子に向いているとかですね。
そういうフードは肥満ではないアレルギーの子にはあまり向いていません。
大雑把なくくりから、オーダーメイドに近い栄養組成になってきているというイメージです。
その分、その療法食が特定の病気に合う合わないという相性も細かく出てきています。
(ある病気には適しているけど違う病気の子には特定の栄養が足りない/過多になる)
そしてメーカーも療法食ごとに適応の病気と不適応の病気をそれぞれ明確に表記もしています。
じゃあその中で何が我が子に合うフードなのか?
それはその子の健康状態を良く知るかかりつけ医じゃないと塩梅を判断します。
だからこそ療法食には「獣医師の指導下で給与してください」という注意書きが書かれているのです。
フード(療法食)業界の問題点
冒頭に書いた通り、現実として療法食の一部はネットあるいは病院ではない実店舗でも買えてしまいます。
しかし私の知る限り療法食メーカー様あるいはその販売代理店様でその現状を良しとしている会社は一つもありません。
基本的にどの会社も病院(獣医師の指導)を経由しない療法食の流通ルートが存在するのを嫌がって、様々な仕組み作りに取り組まれています。
では、なぜネットや病院でないお店で療法食が買えてしまうのでしょうか?
その答えは一部の獣医関係者(関係会社という方がより適切)が市場に半ば横流しして利鞘を得ているからです。
平たく言えば転売ですね。
ごく一部の商品は個人単位で細々と出品している関係者のものだと思いますが、その程度で今のように市中に療法食が流通する訳がありません。
つまり、かなり組織的な転売が為されています。
卸売り市場での仲卸業者は様々な無くてはならない役割を担っていますが、こちらの仲卸は間に入る意味がありません。
だって、本来の仲卸はちゃんといますし。
そもそもメーカーは市中に療法食を回すことを想定していません。
市中には市中販売用で開発した製品がありますから、ただただ転売されている訳です。
なぜ転売が横行するのか?
ぶっちゃけお金です。
関係者に話を聞けることはありませんが、それ以外に理由なんてあり得ません。
ネットや病院以外の実店舗では、療法食の中では割と安値な設定となっています。
誰でも同じ労力で同じ製品を手に入れられるなら、安い方を買いたいですよね。
だからネットや顧客数が多い実店舗では販売数が伸びます。
単価(粗利)が低くても販売数が伸びればしっかりと収益となります。
あと、個人単位ではありますが昨今たびたび話題になるいわゆる「転売ヤー」もいますね。
彼らは利鞘を稼げるなら扱うものはなんでもいいので、供給不安定になっている期間は療法食が美味しい商材化します。
共通することは非常にグレーな世界で収益を上げているということです。
病院のほうが要らない??
さて色々話を整理しましたが、「病院のほうが高値だし買うのも面倒くさいし要らないんじゃない?」と感じた方もいるのではないでしょうか。
その発想は合理的に見えますが、残念ながら不正解です。
なぜかというと療法食は獣医師の指導が必要なものだからです。
指導できる獣医師がいなければ、その療法食が何に適していてどういったリスクがあるのかを自分で調べて全部自己責任で買うことになります。
それで大切なわが子が調子悪くなっても誰も適切な治療をしませんし、責任も取りません。
※相談役の獣医がいるサービスもありますが、どこまでちゃんと診てくれるかは不明です
療法食が市場にダダ漏れしている現状を人医療で例えるなら、第1類医薬品を制限や薬剤師の指導なしに販売してるみたいな状況です。
(同じことは一部の要指示医薬品の輸入代行業者にも言えますが…)
「ペットショップ併設病院の獣医がかかりつけで、随時フード内容を相談している」という場合はもちろんOKですよ。
それはしっかり獣医師指導の下という条件をクリアしていますから。
じゃあ獣医師に指導してもらってネットで買うのが最適解だよね
「その通り!」と言いたいところですが注意点が2つあります。
まず1点目はネットや病院じゃない実店舗では今後どんどん療法食は手に入りにくくなるということです。
多くの療法食メーカーは変な横流しができないよう、動物病院を絡めた流通の仕組み作りの整備を進めています。
購入に病院IDが必要だったり、実績や規模に見合わない不自然な大量入荷を制限するなどですね。
それ以外にも次々と手を打っていますので、これからの療法食販売はおそらく皆さんの目の届く場所には少なくなっていくでしょう。
手に入るとしてもそういった仕組みから外れている旧製品か仕組み作りをしていないメーカー製のものでしょうね。
ネット販売サイトには「終売のため購入不可」となっているものも多いですし、今後どんどん増えていくでしょう。
もう1点はネットで買って獣医は良い気はしないよねということです。
正直に言いますと、ネット関連で薬や療法食を買っている方に親身な治療相談や食事指導をする気にはなりません。
主語を大きくするのは怖いですが、多分獣医であればネットで買ってくれて嬉しいってことはまず無いでしょうね。
当たり前ですが病院は営利企業です。
病院が利益を出せなければそこで働いているスタッフには給料が出ませんし、その家族の生活費も生まれません。
社会貢献をして対価として利益を得ているならまだしも、ただ利益を掠め取ってくるだけの転売業者に病院は良い感情を持っていません。
そういう業者のサービスを利用しているというのは獣医から、スタッフから好かれるでしょうか?
その状況で「この子に合うフードを教えて」という依頼は、我々専門資格を持つ人間に対して「タダ働きしろ」という言葉にしか聞こえません。
もしこういう考えを受け入れてもらえるほど病院と強い関係性を結んでいるのであれば何も言うことはありません。
一方で獣医としての経験上、そういった方は自己判断で色々(…)されることが多いので健康管理や指導をしにくい印象があります。
治療を提案・提供する側としては、自分が管理できる範囲しかお話はできません。
例えば獣医師が療法食によるマイナスや薬の飲み合わせによる副作用が予想できても、もしかしたらストップをかけてもらえないかもしれません。
気づかないところで大切な我が子の健康にとって不利益が生じるかもしれないことは、ぜひ知っておいてください。
宅配サービスも色々出てきている
色々厳しいことを書きましたが、ネット販売などと比べると病院処方の利便性が明らかに劣るのも事実です。
誰もが忙しい今の時代、1回病院へ行ってお金を支払い注文してもらって、後日取りに行くなんて中々辛いものがありますよね。
ここらの課題も実は療法食メーカー様や販売代理店様が努力されており、便利な宅配サービスが出てきています。
今はメジャーな療法食は大体買えるようにはなっています。
これら宅配サービスは病院を絡めているので、かかりつけ医が「いつ、どれを、何個、だれが買ったか」が把握できるようになっています。
状況を見ながら来院や検査を促すご連絡をするなど適宜食事指導ができるような仕組みです。
これらはネットで注文できますが、病院の患者でないと買えません。
誰でも買えるとなったら転売業者と一緒ですからね。
今療法食をわざわざ病院で注文して購入が大変だったり、宅配サービスにご興味がある方はどうぞお気軽にお問い合わせください。
たかつきユア動物病院(木曜・日曜・祝日休診 9:30-12:30、16:00-19:00)
動物病院がしっかり管轄できる状態で購入するか
自己責任の世界に入っていくか
さて、皆さんは療法食をどこで買いますか?
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