院長の木村です。
今回はねこちゃんの予防に関するお話です。
地域差ももちろんあると思いますが、最近だとねこちゃんは完全屋内飼育がほとんどかと思います。
みなさん、「外には出さないしうちの子には予防は要らないかな…」なんて思ったりしていませんか??
それは誤解です!
そうではありません!
では、なぜ屋内飼育でも予防をしなければいけないのか?
そしておすすめの予防薬はなにか?
ぜひ最後までお読みください。
猫ちゃんの予防の種類
以下の3つに分けられます。
- 混合ワクチン
- ノミダニ予防
- フィラリア予防
1個ずつ見ていきましょう。
①混合ワクチンは年に1回受けてくださいねって言われる注射です。
「予防接種」とか「〜種混合ワクチン」とか単に「ワクチン」と呼ばれたりもします。
混合ワクチンはウイルスや細菌の感染を防御します。
メーカーにより細かな成分の違いはありますが、主流は3種混合ワクチンです。
ワクチンの違いについての詳細はこちらの記事で解説しています。
【獣医師監修】ワクチンって何をどう選んだらいいの?
②ノミダニ予防
猫ではスポットタイプで実施されています。
1ヶ月に1回、首筋など舐められないところの皮膚に垂らすタイプです。
メーカーやシリーズにより効き方はかなり違います。
最近では、ジェネリック品の使用も多くなっています。
よくノミ取り首輪で予防されている方がいらっしゃいますが、その効能や安全性については使用経験が無いので何とも言えません。
過去に複数頭、首輪をつけている状態でノミ寄生されている猫ちゃんを診たことはありますので、少なくともそれで大丈夫とは言えません。
動物病院でそういう医薬部外品を使用してるところって実際あるんですかね…私は知らないです。
つまり、そういうことです。
先発品やジェネリック品の違いというのは私が語ることは難しいですが、当院ではノミ予防に関しては先発品(フロントライン、ブロードライン)を採用しております。
③フィラリア予防
ご存知、蚊が運ぶ致命的な感染症でわんちゃんを飼っている方なら間違いなく知っているはずです。
このフィラリアという虫は、一番の好みは犬の体内ですが実は猫の体内にも侵入することがあります。
ただ、犬と違い猫の感染証明というのは非常に難しく、また有効な治療法がないため予防が一番重要な病気です。
ちなみに猫の突然死の約1割がフィラリア症によるものと言われています。
これもやはり月に1回の投薬になります。
ただし、犬と猫では使う製剤が異なりますので注意してください。
予防の目的
「大切な我が子が元気に、不快なく過ごしてほしいから」
これは当たり前の話ですよね。
先のフィラリア症も然り、予防対象の感染症は発症すると命や寿命に影響することがあります。
ノミ寄生では(子猫以外)命に関わることはよっぽどありませんが、その代わりにご家族もろともQOLが下がります。
ノミはノミ刺し症(刺された所が炎症で腫れる)だけではなくノミアレルギー性皮膚炎を引き起こすことがあります。
これはかなり痒い症状で一度起きると本人のQOLが相当下がります。
また、ネコノミなんかは平気で犬やヒトを刺してきます。(宿主特異性が低いと言います)
参考:アース製薬様サイト
そして吸った血を栄養にして生みだされた卵は毛をジェットコースターのように伝って周りの環境に落ちていきます。
イメージできますよね?そう、家がノミに汚染されます。
1回その状態に陥ると、ヒトも痒いし徹底清掃しても取りきれないしで本当にきつい状態になることがあります。
私も過去2件、バルサンでも駆除できなくて結局業者を呼んで駆除してもらったというご家族を経験したことがあります。
ちなみにイヌノミも猫ちゃんを刺してきますので、散歩に行くわんちゃんが同居している場合も予防は欠かさず実施する必要があります。
予防したらノミダニはくっついてこない?
残念ながら答えは「No」です。
予防薬は忌避剤ではありませんので、予防薬を毎月塗布したとしても草むらなどに突っ込んでいったら体に飛んできます。
薬を定期的に塗布していたら、ノミやダニが皮膚表面を歩いている間、あるいは皮膚を刺した時に薬効成分が体内に入っていって虫は死にます。
ですので、予防はしてもノミをたまたま皮膚表面に見つけてしまうことはあります。
ちゃんと効能を発揮できていれば死んでいるか弱っているかだとは思いますけどね。
全く外に出ないけど予防っているの?
いります。
簡単に理由を言えば、完全室内飼育でも感染機会はあるからです。
①混合ワクチンについては以下の記事を参考にしてください。
【獣医師監修】ワクチンって何をどう選んだらいいの?
②ノミダニ予防に関しては、完全室内飼育で飼い主様が野外のノミダニがいそうな場所に行っていない、他の動物も触っていないという条件が達成できる限りは必要ないかもしれません。
ノミダニは自然発生するものではないからです。
逆に言えば1個でも達成できないようであれば、予防すべきと考えます。
お仕事で植物に囲まれながら作業することが多いとか、動物の生体関係の組織に出入りしている場合も注意です。
「ヒト」が自宅にノミダニを持って帰ってきてしまいます。
③フィラリア症に関しては以下の記事を参考にしてください。
特に実験データ上では、蚊の出現高度はマンション8-12階まで達し得るので「高層階に住んでいるから大丈夫」という説も否定されました。
【獣医師監修】猫のフィラリア症について
予防したら100%防げるのか
①混合ワクチンでは全く発症しなくなるというものではありません。
どちらかというと、感染が成立する確率を減らす・発症した場合の重症度を下げるというイメージです。
特に猫エイズのワクチンでは、予防しているのに発症して免疫不全になることがあります。
②ノミダニ予防はほぼ防げます。大量寄生された場合には取りこぼしが出ます。
③フィラリア予防は理論上100%防げます。期間中どれだけ蚊に刺されようが防げます。
多頭飼育
猫2頭以上が同じ空間で生活している場合、予防の重要性は劇的に増します。
感染症が発生した場合に全頭が治療対象になりますし、発症タイミングがズレるとその感染症をうつし合います。
【獣医師監修】猫風邪ってどう治療していけばいいの?
特に猫風邪の主原因であるヘルペスウイルスは注意しなければいけません。
ヘルペスウイルス感染症を発症した経験があるとウイルスは神経に潜伏してしまいます。
その猫ちゃんにストレスがかかったり別の病気が起きたりすると再発症してウイルスを撒き散らし始めるため、外に出ていないのに風邪が自宅で流行することになります。
こっちの子が治りかけたと思ったらあっちの子が体調崩し始めて、落ち着いたとおもったらまたこっちの子が…みたいな感じで本当に大変な状況です。
これは一度経験しないとキツさが想像しにくいのですが、この悪循環を経験された方は口を揃えて「ちゃんと予防すれば良かった」と言われます。
飼育頭数にもよりますが、ひどい時は週3−5回通院で検査治療費は1週ごとに2−5万円以上、しんどそうにしている様子を見続けて心も病む、しかも病気がいつ収束するかも分からない。
その中で忙しい家事の合間を縫ったり仕事を休んだりして通院し、家では強制的に水を飲ませ缶詰を食べさせ、部屋の色んなところを消毒して…。
そこに育児が入ると経験上、100%の治療は不可能です。
イメージ通りの治療を100としたら正直言ってせいぜい50くらいが限界です。
病院としてはこれをなるべく経験いただきたくないんですね。
ですので多頭飼育している場合は、完全室内でも必ず予防しましょうと強くお伝えするようにしています。
おすすめの猫用予防薬
現在製品化されている猫用予防薬はかなりの種類がありますが、当院では「ブロードライン」をイチオシしています!
この製品のいいところは以下の通りです。
- ノミ+マダニ+フィラリア予防が全て一緒に配合
- 予防系で唯一『条虫類(※特に瓜実条虫)』まで叩ける
- 予防系で一番有名なフロントラインの完全上位互換で、同メーカーの実績も十分
- 安全性も問題なし!(もちろん一般的な皮膚に合う合わないはありますが)
※瓜実条虫はノミが媒介する腸内寄生虫で、ブロードライン以外では大きい錠剤の駆虫薬を飲ますか特殊な滴下タイプの駆虫薬しかありません
特に現時点では猫のフィラリア予防で承認を取っている薬剤が非常に少ないです。
ペットショップさんでよく使われている「レボリューション」か、この「ブロードライン」くらいです。
わんちゃん用のミルベマイシン錠などはありますが効能外使用になります。
よって、フィラリア予防を前提にすると2択になり、条虫類まで落とせるのが「ブロードライン」になりますのでこちらをお勧めします!
活用方法
おすすめの使い方や猫ちゃんは以下の通りです。
- フィラリア予防として(通常シーズンは4月開始-12月終了の9ヶ月)
- 野良猫ちゃんを保護した時の予防・駆虫に
- 譲り受けたが予防関係をどうしてたか分からない子に
- 外と室内を自由に行き来している
- 同居のわんちゃんがノミダニがいそうなところを散歩する
- 時々脱走してしまう
- ベランダや庭、勝手口などに野良猫がやってくる環境
- 他の薬剤では駆虫し切れなかった
- 瓜実条虫(肛門から米粒みたいな虫)が出てきてしまった
この欲張り効果のブロードラインはぜひ世の中の全てのねこちゃんに試して欲しいと思ってます。
ご興味のある方はかかりつけの動物病院にお問い合わせください。
※ただし使用できるのは生後7週齢以降ですのでご注意ください
※6週齢の子猫には「レボリューション」を使用することが多いです
猫のフィラリア症についてはコチラで詳細に解説しておりますのでご一読ください。
【獣医師監修】猫のフィラリア症について
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