院長の木村です。

 

今回は動物たちの爪のお話です。

爪切りって面倒だしやろうとしたら嫌がるし逃げるしで、ついついサボりがちになっちゃいますよね。

 

爪ってどんどん伸びていったらどういうことが起きるのでしょうか?

ご紹介していきます。

(今後いい写真が撮れたら載せていきます)

 

まず結論

・歩き方がおかしくなって関節の負担が増大する(滑りやすくなる)

・狼爪が巻いて皮膚に刺さることがある

・全ての爪で肉球に刺さって膿む

共通

・長い爪が何かに引っかかって折れる

 

残念ながら爪を切らずに問題なく過ごせることはありません。

 

犬の爪って散歩すれば削れるんじゃないの?

おっしゃる通りです。

 

中型以上のよく散歩をするわんちゃんであれば結構削れます。

※中型:15kg程度が目安、おっきいフレブルやおっきい柴犬クラス

 

これは、「それなりの体重が爪にかかる犬」で「コンクリやアスファルトの上」を「毎日30分以上は歩く」くらいの条件が必須です。

 

逆に言えばこれら条件をクリアしていなければどこかのタイミングで爪を切る必要が出てくるでしょう。

 

また、狼爪(前肢内側の離れた爪、稀に後肢にもあり)は体重が全くかかりませんのでどれだけ歩こうが削れません。

ですので、全てのわんちゃんで狼爪は定期的に切らなければいけません

 

散歩で自力で削れているわんちゃんですが、削れている=(人にとって)爪が痛くないとか削れている=引っかからないとは限りません。

 

爪の構造上、必ず先端が尖っていきます。

せめて、先をわずかに切り落とすかヤスリがけをしたほうが無難でしょう。

 

犬の爪が長すぎて起きるトラブル

おそらくみなさまが遭遇して一番焦るのは折れることだと思います。

 

爪が長くなるとどんどんフックのように丸みを帯びてきて、いかにも何かに引っかかりやすそうな形になります。

 

また、爪の先にいけばいくほど古い角質になるのでざらざらしたり時にひび割れたりします。

 

こういった丸みやひび割れに何かが引っかかるとわんちゃんは焦って動きます。

そして運が悪いと爪が折れます。

 

引っかかりやすいものはカーペットやソファのほつれた毛足、自転車のかごの網目などです。

(後者はそもそもかごにそのまま載せるのを止めたほうがいいんですが…)

 

爪が折れると想像以上に出血します。

また、わんちゃんも痛がって暴れるからみんなしてパニックになることが多いです。

 

その際は抱っこなり支えるなりして落ち着かせながら、患部を清潔なガーゼやティッシュ複数枚でふんわりつつみ指先全体に圧をかけて止血してください。

 

ちなみに爪が折れると高確率で、その後の病院にて折れた爪をばっさり切る処置になります。

 

出血も痛みもありますが一瞬の処置なので思い切って鎮静無しで行くことも多いです。

 

もちろん鎮静はかけられますが、爪が折れて痛がってる状態だととてもかかりにくいので結構強めにかけることになります。

 

根本から折れた場合は、傷が回復してからも爪が生えなくなったり、生涯斜めに生える爪になったりします。

こればかりは獣医にはどうすることもできません。

 

他には、爪が長すぎて接地する際に邪魔になって指の関節が斜め方向に曲がっていきます。

長すぎる爪

この状態を続けていると手や手首の関節に負担が増大してしまうのはイメージしやすいかと思います。

 

更にこの状態だと地面に対して垂直にしっかり体重がかからないので肢が滑りやすくなります

 

特にシニア期以降やダックスなどでは滑って転んで腰ビキッ!!みたいな流れが割と多いので十分注意しなければいけません。

 

猫の爪が長すぎて起きるトラブル

爪が肉球に刺さっている

これはほぼ「肉球に爪が刺さる」に限られます。

 

猫ちゃんの爪って元々カーブしやすいんですが、そのまま円を描くように伸長した結果、肉球に刺さります。

肉球に当たってしばらくは肉球の弾力性によって耐えますが、この時点で痛みや強い違和感によって歩行異常が出ます。

 

そこからさらに爪が伸び、皮膚の限界を迎えるとついに爪を肉球に刺さります。

当然、ずっと続く炎症・出血・疼痛が発生します。

 

また皮膚の内部と爪が入ると、そこを菌が伝ってだいたい感染症を起こします。

そうすると余計に炎症がひどくなり動かなくなり食欲が低下していきます。

 

この状態から猫ちゃんが自力で回復するのは不可能です。

必ず動物病院の処置が必要になります。

 

もう1点は、長すぎると犬同様色々なものに引っかかりやすくなるということです。

特に猫ちゃんは運動性が高いので、引っかかった時の動き次第では手首や足首も同時に痛めます

 

爪が原因で骨折した子は経験ありません。

しかし過去には足が隙間に挟まった状態で暴れて骨折した子はいますので、最悪あり得える事態だと思います。

 

爪が根本から折れるのはあまり経験がありませんが、どちらかというと表面がごっそり剥がれて肉部分が露出します。

人の爪が剥がれた状態と似ていますね。

 

あと過去に1例だけですが、仲の悪い同居の猫の眼に伸びていた爪を当てて相手猫を緊急手術送りにした子がいました。

結局なんとかその子は治ったのでまだ良かったのですが、それにしてもワンパンチ10万円は飼い主様もゲンナリされていましたね。

 

猫って爪研ぎすれば大丈夫なんじゃないの?

おっしゃる通りです。(2回目)

しっかり爪研ぎすれば、爪は皮をめくったタケノコのように小さく鋭くなっていきます。

それを繰り返していたら理屈上は肉球に刺さることは起きません。

 

爪が肉球に刺さるような猫ちゃんは往々にして「シニアの子」です。

シニアの猫ちゃんは体力あるいは関節機能の低下、持病などから爪研ぎ回数が減っていきます。

 

家の猫ちゃんの爪を横から見て、太かったら要注意です。

そういう子はすでに爪研ぎ回数が減っています。

 

シニアでなくても、例えばスコティッシュに代表されるような関節炎持ちだったり、爪を十分に研ぐものが存在しない場合はどんどん伸びていきます。

 

爪研ぎのみで問題ないケースは「環境に十分爪研ぎ道具があって」「爪を十分研ぐ元気がある子」になります。

ただし、その状態は爪はかなり鋭いですから結局どこかに引っかかるリスクは残ります。

 

あとしがみつかれると普通に痛いですよね。

 

どれくらいの間隔で爪切りをしたらいいのか

動物さんの運動習慣や体重、年齢などでも様々ですが1-2ヶ月毎をおすすめすることが多いです。

厳密には1ヶ月でチェックして大丈夫そうならまた1ヶ月後に見て、と繰り返したら切るタイミングが分かります。

 

わんちゃんで1ヶ月に1回はトリミングサロンに行く子は爪に関してはそんなに心配いりません。

2ヶ月に1回くらいしか行かなくて家でも爪を切らないわんちゃんや、猫ちゃんは注意です。

 

そろそろ切りたくなる目安は、わんちゃんがコツコツと音を立てて歩くようになったら、猫ちゃんは爪が伸びて痛くなったら、くらいです。

 

時々は落ち着いてる時や眠そうな時を見計らってそお〜っと爪が伸びすぎていないかチェックしましょうね!

 

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