院長の木村です。

 

この時期になると近所で子猫が生まれて保護された方もいるのではないでしょうか。

 

今までに子猫(500g未満の小さい子)を保護された、あるいは世話をされた経験が無いとどうしていいか困ってしまうと思います。

 

本記事ではそういった子猫を保護した時にまず何をすべきかをご説明します。

 

⓪子猫を保護する責任と覚悟を考える

もしかするとこれを読んでいる方は、今まさに子猫を保護最中、もしくは1回家に連れて帰っていらっしゃるかもしれません。

その場合は、とりあえずこの項目だけでも先に読んでおいてください。

 

すでにTNRについての知識とご理解がある方は気にせずまで読み飛ばしてください。

子猫の保護活動をしたことがある方までスクロールしてください。

 

 

さて、子猫を保護した経験の無い・猫というものに触れた経験の少ない方へ質問です。

 

あなたはその子猫を最後の時まで飼育する、もしくは譲渡活動をできますか?

子猫を保護するということは命に責任を持つということです。

 

保護直後はかなりしんどい世話が待っていますが、この程度を乗り越えられない方は保護するのは諦めるべきです。

 

「このままでは死んでしまって可哀想」

その感情は優しくてとても尊く、ぜひ今後も持ち続けていただければと思います。

 

しかし、保護対象であるその子猫は「野生動物」です。

もし、その子猫を保護しなかったらおそらく衰弱して亡くなったりカラスなどにやられたりするでしょう。

 

しかしそれはある意味、野生という中での自然の摂理なのです。

人が覚悟や責任も無く捻じ曲げていいものではありません。

 

保護するのであれば、健康に・幸せに過ごす為に終生飼育し十分な食事・住・医療環境を整える覚悟を持つべきです。

もしくは、そういった環境を探して譲渡する橋渡し役は最低限やってください。

 

その子猫の自由意志を奪い、野生の世界から離脱させる者としての責任です。

 

万一、元気になったら野生(野良)の世界へ戻そうとお考えであれば是非止めてください

 

なるべく早めに戻したところで母猫はもうその子の世話はしません。

またすぐに衰弱して亡くなるだけです。

 

運良くその後も生き延びたとしても、結果として無用な繁殖を招き不幸な子を数倍増やすだけです。

 

また、野生のみならず糞尿被害や感染症蔓延など人間社会にも少なくない迷惑がかかります。

その行為は猫を含む他者の不利益を無視した自己満足以外の何ものでもありません。

 

厳しい言い方にはなりますが、終生飼育の覚悟が無いのであれば「今、この場で」返してきてください。

 

 

 

ここまで読んで、大丈夫ですね?

次に行きましょう。

①まず状態の確認

まだ、眼が開いていなければ、その子猫は生後2週間未満と思われます。

 

体重で見ると、(脱水状態にもよりますが)300g台で2-3週間齢、400-500gで3-4週間齢といった感じです。

 

本来は母猫が十分なケアをしている時期ですので、その代わりとしての体調管理はシビアなので寝不足は覚悟しましょう

 

さて、通常子猫は成猫と比べてよく鳴きます。

触ったり持ったりしても鳴かずに寝ているような顔つきをしている場合は低体温や脱水や低血糖を起こしている可能性があります。

 

その場合はすぐに病院に連れていきましょう

 

ノミが大量寄生しているような子猫の場合はノミ性貧血(子猫は死に至ります)を起こしている危険性があります。

 

歯茎が白っぽいなら、元気なように見えてもすぐに受診して駆虫処置をしましょう。

 

※ノミに大量寄生されている子猫は黒いフケと赤錆みたいな汚れが体の被毛全体についています。

※すぐ病院に行けない場合は風呂場や脱衣所のノミ汚染を覚悟でシャワーしましょう。

 

もし、病院に行くのに時間がかかったり開いていない時間に保護されたのであれば、

 

・人が多少「むわっと感じる」室温での温度管理

※毛布を入れた段ボールが湯たんぽなどで室温管理しやすいです

・20%程度の砂糖水や子猫用ミルク(無ければ牛乳をぬるま湯で2-3倍に薄める)をスポイトで口に直接与える

 

この2点をまずチャレンジしてください。

 

ちなみに眼が開くか開かないかのような子猫は自力排泄をあんまりできないのでそれも人が促します。

陰部や肛門を多少湿らせたティッシュで軽くポンポンポンと刺激してください。

 

おしっこは割と簡単に出てきますが、うんちは中々出てこないことも多いです。

最大5分を目処に頑張ってみてください。

 

排泄した途端、お腹がすっきりしてミルクを飲み始める子も多いです。

②管理場所

保護したての子猫は猫風邪を引いていることが多いですし、ノミを含め何の病気を持っていても不思議ではありません。

 

特にネコノミは人も刺してきますし高いジャンプ力も持っています。

 

ノミを室内に撒き散らさないために、先に述べたような段ボールに入れて様子見の時以外は蓋を閉めていただくことをお勧めします。

室温のコントロールができるのであれば、玄関に段ボールを置くのも防衛策の一つです。

 

先住猫がいる場合はなるべく隔離して管理してください。

 

先住猫にとっては自分のテリトリーに知らない猫の臭いが入るだけで多大なストレスがかかります。

ストレスにより免疫力が低下して風邪が移ったり再発したりなど体調を崩す原因にもなり得ます。


子猫を触った後は必ず手を消毒してから先住猫に触れましょう。

もし子猫がエイズや白血病ウイルスを持っていたとしても、直接触れ合う環境でなければ先住猫への感染はほぼありません。

 

③どれくらいの頻度で世話をすればいいのか

子猫は成猫のように放っておいたら必ず衰弱します。

 

まだ生後間もないほど手間がかかると思っていただければOKです。

具体的には10日齢までは2-3時間毎、20日齢までは3-4時間毎、30日齢までは4-6時間毎です。

 

なぜこんな頻度で世話をしなければいけないかというと、ひとえに体力の無さが原因です。

 

小さいと体力や予備能力が無いので脱水や低血糖を起こしやすいのです。

それでいて、胃腸の容積も小さいので1回当たりに飲める水分・栄養分も量が限られます。

排泄も促してあげなければいけません。

 

よって回数でカバーするしかないよねという結論になります。

 

子猫の世話はかなりしんどいので、もし世話をする方が複数いらっしゃるのであれば分担しましょう。

 

④ミルクの量

与えるものは子猫ミルクがベストですが、今手元になければ牛乳を2−3倍に薄めたものでも構いません。

 

それすら無い場合はミルクを買いに行く明日までの繋ぎで20%砂糖水を作ってください。

 

1-10日齢では1回5-8cc、11-20日齢では8-12cc、21-30日齢では10-20ccを目安に与えてください。

1日の総量はそれぞれ40-60cc60-80cc80-100ccが目安になります。

 

スポイトを真正面から口に突っ込んで舌先に数滴垂らしてから自分で吸い始めたら生命力のある証拠です。

ちなみに一般的なスポイトの量は2-3ccです。

弁当に入ってそうな魚の形したスポイトは4ccです。

(当然、製品によって多少は違います)

 

上の与える量と照らし合わせて給餌してください。

⑤シャワーや風呂の必要性

汚れていなければ必要ありません。

 

どうしてもドロドロでこのままでは、、ということならシャワーや洗面器に35℃程度のお湯を張って洗ってください。

 

タオルドライした後は火傷防止のためドライヤーの送風口をご自身の肩幅くらい離した状態で使ってください。

 

ノミ大量寄生が疑われるが、すぐ病院にいけない場合もシャワーやお風呂は入れてあげてください。

⑥とりあえずは動物病院へ

保護初日に行けるならすぐに、行けない場合は次の休みの時には必ず動物病院に連れて行ってください。

 

その時に、出して半日以内の新鮮便を持って検査してもらうと安心です。

※ミルクのみで生きている子猫はチューブのカラシみたいな見た目の便が正常です。

 

病院では日齢数や月齢数に合わせて駆虫薬を選んで処方されます。

必要がなさそうであれば身体検査で終わることもあるかもしれません。

 

獣医師はここで、衰弱具合、各種寄生虫への感染状況、生命力、風邪の状態、先天性疾患の有無などを診ます。

そして必要に応じて検査、治療をしていく訳ですね。

 

ちなみに子猫のオス、メスがよく分からなければ先生に聞いてみましょう。

 

性別は陰部の形状などで判定しますが、私は以下の基準で判断しています。

 

・陰部(肛門じゃないですよ!)が正円をしている→オス

                楕円をしている→メス

・陰部の中に長さ2-3mmのコリコリした感触(陰茎)がある→オス

                          ない→メス

 

睾丸の有無は小さすぎて体重300gとかのレベルじゃ正直分かりません。

 

オスメスが分かれば早めに名前を付けてあげましょう。

⑦病院受診後は獣医師の指示に従いながら

必要に応じて獣医師が再診の指示を出すことがほとんどです。(ポリシーで出さない先生もいらっしゃいます!)

 

獣医師も全てを説明し切れないし、あなたがどこまで分かってどこが分からないのかも把握し切れないので積極的に質問をしましょう。

 

ちなみに子猫保護に慣れている方であればあるほど「しっかり病院の指示に従って受診」されます。

⑧隔離の必要性

犬との同居であれば、さほど時間は要らないでしょう。

 

ノミを含めた寄生虫を落としさえすれば、少しずつ顔合わせしていいと思います。

 

先住猫がいる場合は少しややこしくなります。

理想論で言えば、4-6ヶ月齢以降に猫エイズや猫白血病のウイルス検査をして陰性を確認したところで顔合わせです。

 

ただ、そんな何ヶ月も隔離していられない場合がほとんどですので、やはり駆虫が粗方終わった時点で顔合わせすることが多いです。

 

ご心配な方は最初の時点で病院にてウイルス検査を一度受けておくのもいいでしょう。

ただ、その時点での検査精度は低めなので、獣医師から2ヶ月後の再検査を指示されると思います。

 

寄生虫ではありませんが、子猫は大なり小なり猫風邪を引いている子が大半です。

 

特にヘルペスウイルスは飛沫感染を起こしますから、ストレスも相まって先住猫が最も風邪にかかりやすいタイミングになります。

 

風邪症状と隔離の塩梅は一律に説明することは不可能なので、かかりつけ医に相談してください。

 

保護後少なくとも1ヶ月の間は先住猫の風邪症状や発熱の有無、食欲・飲水量が低下していないかに注意してください。

 

最後に

本記事はまだ子猫保護の知識や経験が浅い方がどうすれば分からなくて調べているタイミングを想定してまとめました。

慣れていらっしゃる方には当たり前のことばかりだったかもしれません。

 

さて、本文でも触れましたが子猫は基礎体力やストレス耐性(脱水や栄養不足など)がかなり低いです。

その対応を見誤ると生命を脅かす状況に陥ることがあります。

 

1ヶ月程度過ぎたら離乳し始め、体重と体力も増えて世話が楽になってきます。

それまでに、自信がない・心配なことがある場合は様子見せずに動物病院に連絡もしくは受診しましょう。

 

 

保護から少し経ったタイミングでの記事はまた後日にまとめていきますね。

 

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